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プロ野球「師弟の絆」裏物語 第3回 谷繁元信と権藤博の「一意奮闘」(1)

「俺が責任を取るから打者の嫌がるリードをしろ」日本一の捕手が横浜時代に叩き込まれた“勝負哲学”

 中日の高木守道監督誕生で、12年ぶりに再会を果たした谷繁元信と権藤博。かつて、横浜で“配球術”を徹底的に叩き込まれた「日本一のキャッチャー」は、クライマックスシリーズを前に、臨戦態勢の構えだ。「責任はオレが取る」とベテランにチームを任せる“権藤マジック”の真髄に迫る。

「僕なんて小僧っ子ですよ」

「少々のことでは休みたくないんです。僕らの年齢になると、一線で結果を出していないと残された道は引退しかありませんから、レギュラーで出ていなくてはいかんのです」

 今年の12月で42歳になる中日・谷繁元信は今の自分の置かれている立場についてこう語っていた。谷繁はプロ入り1年目からマスクをかぶり続けて28年、年間70試合以上コンスタントに出場を続けている。96年からは年間100試合以上、捕手として出場しているというのは驚異的と言っていい。

 それは、「休んだら自分は終わりだ」という思いが、徹底的に叩き込まれているからだ。

 9月2日の対ヤクルト戦でも、本塁上の交錯プレーで太腿四頭筋を痛めた谷繁だったが、「すぐに戻れるから登録抹消はしなくていい」とみずから語ったほど、試合への出場にこだわりを見せる。

 中日の場合、監督の高木守道が70歳ならば、投手コーチの権藤博が73歳。47歳の山本昌弘を筆頭に、44歳の山崎武司、40歳の和田一浩と谷繁を含め、40歳代が4人も主力にいる。

「上が上ですから、僕なんて小僧っ子ですよ」

 と笑っていた谷繁。しかし権藤コーチに言わせれば、

「今の位置にウチがいられるのは、間違いなくシゲ(谷繁)の力、大したものですよ」

 と賛辞を隠さない。

 昨年のMVPで今季もセ・リーグの最多勝争いに顔を出す12球団でいちばん安定していると言われるエース・吉見一起も、谷繁に絶対的な信頼を寄せる。

「僕は谷繁さんのサインに首を振ったことはない。1年間トータルで考えてサインを出してくれていますから‥‥」

 まさに、中日の中で不動の大黒柱の座に収まっているが、谷繁とて生え抜き選手というわけではない。

「横浜と中日のどっちが長くなったかわからなくなりましたよ」

 と、横浜から名古屋に来てかれこれ10年がたつ。その間、4度のリーグ制覇を果たし、1度の日本一に輝き、文字どおり“日本一の捕手”という肩書がふさわしい。だが、谷繁が初めて優勝を経験したのは横浜時代のこと。その時の監督こそ、現在、中日の投手コーチを務める権藤だった。谷繁はその時のことを鮮明に覚えている。

「最初(96年)はバッテリーコーチで来られて、配球まで細かく指示していた。

『どこかが痛い』とでも言おうものならば、『休んでもいいよ』と平気で言う。

『代わりならいくらでもいるから』って‥‥。それ以来、『あそこが痛い、ここが痛い』なんて言っていられなかったですよ」

 翌年、監督になっても、その姿勢は変わらなかった。

「休みたいならしかたないじゃん。代わりはいくらでもおるもん。おらんのは抑えの佐々木(主浩)ぐらいなものよ」

 権藤の平然とうそぶく姿に、選手は危機意識が芽生え、チーム内を一つにまとめ上げていったのだ。

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