スポーツ

「猪木VSアリ」38年目の死闘“新”事実!(1)世紀の一戦は茶番劇でではない

20140710g

「格闘技世界一決定戦」──。格闘技全盛の今でもこの冠が似合うのは、1976年6月26日に挙行されたアントニオ猪木VSモハメド・アリの一戦をおいて他にないだろう。あれから38年、“幻の映像”と言われた試合の一部始終が、ノーカットでついに日の目を見た。しかし、その舞台裏にはカメラには映らない死闘があったのだった。

「試合後、『猪木VSアリ戦は茶番だ』という声が上がりました。とんでもない。アリはファンの前では軽快なステップを踏み、試合後悠然と歩いていたが、実はエレベーターに入り、扉が閉まると、そこに倒れ込んだんです。猪木のキックで足に血栓ができていた。試合後、取り巻きのアリ軍団の中に韓国出身の人物がいたため、韓国の朴正煕(パクチョンヒ)大統領を表敬訪問しなければならなかった。実際の血栓の状況は、予断を許さない状況で、そのためケガがよけい悪化し、タイトルマッチも延期したほどですよ」

 そう熱く振り返るのは、“過激な仕掛け人”としてアントニオ猪木対モハメド・アリ戦の一部始終を見届けた元新日本プロレス専務取締役の新間寿氏だ。

 今からちょうど38年前の6月26日、日本武道館で「格闘技世界一決定戦」と銘打ってマッチ・メイクされた“世紀の大一番”は試合後、一度も映像化されることはなかった。ところが38年の時を経て、ついに禁断の映像が「燃えろ! 新日本プロレス 至高の名勝負コレクションエクストラ」(集英社)として“解禁”となり空前のヒットとなっているのだ。

 だが当時、この世紀の大一番には試合後、「世紀の凡戦」「茶番劇」といった評価が飛び交った。それもそのはず、プロレスラーとボクサーの対戦ながら、派手な技の攻防はほとんどなく、猪木がリングの中央で寝転がる一方、アリがパンチのチャンスを狙うという“にらみ合い”が15フルラウンドのほとんどを占めたのだ。日本ではテレビ朝日が昼の生中継と夜の録画放送を独占。しかし試合後は、全国紙の新聞までもがバッシングする騒動となったのだ。

 当時、アリ戦に向けて、猪木のトレーニングパートナーを務め、試合当日もリングサイドでセコンドを務めたプロレスラーの藤原喜明が言う。

「当時、したり顔をして、“茶番”だと言う連中を見ると我慢ならなかった。ホント、ぶっ殺してやろうかと思ったほどです。試合前も非常にピリピリした状態で、常に命の危険もあった。漏れ伝わってくるアリサイドとの舞台裏を聞くと、アリ軍団にはピストルを持っているヤツが2人もいるというじゃないですか。もし、アリが負けるようなことがあると、何が起こるかわからない。その時は自分が盾になるんだと命がけだった。そもそも出来レースならもっとおもしろくしますよ。真剣勝負だったからこそ、ああいう展開になったんです」

 その後、90年代の総合格闘技ブームを嚆こう矢しとして「猪木VSアリ戦」は再評価され、打撃と寝技を得意とする選手同士の攻防として、歓声が沸き上がるような場面となった。新間氏が言う。

「正直、私も忸怩(じくじ)たるものがあった。後日、UFOの川村龍夫社長が、グレイシー柔術の連中にアリ戦のビデオを見せたら、称賛の嵐だったと言ってくれたのがせめてもの救いだった」

 実に、「世紀の茶番劇」が文字どおり「格闘技世界一決定戦」と認知されるまでに20年もの歳月を要したのだ。

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
2
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
3
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
4
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか
5
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」