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2人の最新対局は2月9日、朝日杯オープン戦準決勝。公開対局の一戦で、開始時間は午前10時半だったが、対局者が席に着く前に二重三重の人垣ができるほど、会場の有楽町朝日ホールには多くのファンが詰めかけていた。ユーモアを交えた巧みな話術が売りの藤井猛九段が大盤解説役で、「この将棋は見るだけ(でいい)。すごい、すごいと感動する」と戦前から太鼓判を押したように、この日の大一番となった。
先手は羽生。渡辺とは今年の10戦目となる対局で、2月1日にあったA級順位戦(羽生の勝ち)同様、横歩取りの将棋になるが、
「形勢が渡辺に傾いたのは、羽生の49手目▲3五歩と早かった。△4四角の飛車と香車の両取りを受けているが、それでも△5五角で香車の両取りが残るからです」(前出・観戦記者)
局後の感想戦で羽生は、この手以降は「ダメですね」「はっきり悪くしました」「収拾がつかない気がします」と敗勢を認めている。渡辺が「少しやれるかなと思った」と控えめだったのは、羽生のつらい胸の内を思いやってのこと。感想戦で勝者が脇役に徹するのは定石でもあるからだ。
▲3五歩から十数手進んだ頃、藤井が聞き手の女流棋士・上田初美に「(形勢は)どうですか」と問いかけている。「後手がよさそうに見えますが‥‥」と上田が言葉を濁すと、藤井は「では私が言いましょう。後手が技ありの局面です」。
98手で羽生が投了。
「序盤に伏線があった。渡辺が羽生の緩手を誘う巧妙な指し回しの“罠”を仕掛けていたのです。羽生は知らず知らずのうちにハマッていった。渡辺の完勝劇でした」(前出・観戦記者)
渡辺は同じ日に行われた決勝戦で若手の菅井竜也に勝ち、優勝賞金1000万円を手にしている。渡辺のブログにはこうあった。
〈朝日杯は2連勝で初優勝。タイトル数、棋戦優勝回数にはこだわりたいので、数字を積み重ねるのは嬉しいですね〉
ブログではタイトル戦でなくても勝負どころの指し手を図入りで解説することが珍しくないのに、朝日杯について書かれていたのはたったこれだけ。
「その後、2つのタイトル戦が控えていることもあっただろうが、あっさり振り返るだけだったのは、勝つことに、そして羽生を負かすことに慣れているからとも取れる」(中堅棋士)
あの羽生を負かすことに慣れている──。事実、それを示すデータがあった。
まず、羽生の棋士生活27年はそのまま記録の歴史でもある。通算タイトル獲得数83期と24年連続タイトル保持は歴代1位。竜王を除く六冠の永世称号と96年の全七冠制覇は将棋界初であり、4連覇中の一般棋戦NHK杯(通算10回優勝)の名誉選手権者でもあるのだ。
棋士生活13年の渡辺は、03年に獲得した竜王を9連覇中。09年、21歳9カ月での九段昇段は最年少記録で、通算タイトル獲得数10期は10位につけている。
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