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武論尊、北斗の拳「タクシーを待たせて熱海で宴会」

──初連載を始めるのは、かなり早かったですよね。

武論尊 多分にえこひいきもあっただろうし、本宮のところから離さなきゃいけないっていう向こう(注・少年ジャンプ編集部)の意図はありましたよ。だってアシスタントに悪い影響しか与えないからね。暇でやることないし、給料3万円ぐらいだったから足りないんで、土日になるとみんなに「この馬がいいからこの馬を買え」って言って、みんなから金集めて、それを俺がノミ屋に持ってくんだけど、むしろ俺がノミやってたから。「じゃあノミ屋に頼んでくるから」って言ってそのまま懐に入れて。

──ダハハハハ! まあ時効ですからね(笑)。

武論尊 うん。で、当たっても配当金は払わない!

──悪徳すぎますよ!

武論尊 そりゃ編集部としても離そうとしますよね。それで原作者になって「ドーベルマン刑事」が当たるまで4年かかって。それまで年収120万とかなんですよ。アパートの家賃が2万で8万ぐらい残るんで、毎日飲みに行けて。それが「ドーベルマン刑事」が出た瞬間に年収が1200万になったから、もう夢のような世界ですよ。何をしたかっていうと、今までお世話になった人を連れて石神井公園の駅からタクシーで熱海まで行って芸者さんと宴会やって、タクシーを待たせといて、ベロベロに酔っ払って峠の上で全員がゲロ吐いてまた戻ってくるっていう。それを何回かやったら1年目で肝臓がパンクして1カ月入院かな?

──連載を抱えてるのに!

武論尊 ちょうど1年目ぐらいの一番大事な時で休ませてもらえないから、点滴打って寝ながら病院で書いてましたね。その時の医者が「もうお酒を飲んだらダメ」って言えばよかったんですけど、「完治しました。もう1回肝臓が悪くなったら、また飲みすぎなだけです」って言われたんで、じゃあ飲んでもいいんだって思ってまた始まっちゃったんですよね。あの時、医者が止めてくれれば全然違う人生だったのに。

──ダハハハハ! その後も飲み続けたわけですね。

武論尊 そうです。でもホント「ドーベルマン刑事」のヒットっていうのはうれしい反面、こんなに生活が変わるんだってぐらいお金が入ってくるって現実感がすごくて、ちょっと偉そうになりましたね。それで、ちばあきおさんに怒られたんですよ。かなり調子こいてましたから。当時、「少年ジャンプ」はとにかく漫画家さん優先で、原作者が叩き台を書いたら漫画家と編集で作っちゃう、みたいな感じで。だから「ジャンプ」だけは単行本の印税も6:4で4ですからね。

──そうなんですか! まさか梶原一騎先生も、それでやられてたんですか?

武論尊 いや、梶原さんは6:4で逆でした(笑)。

──自分が6で(笑)

武論尊 だから「北斗の拳」も「ジャンプ」で連載やってるうちは6:4でしたね。コアミックスに移ってからは5:5にしてもらいましたけど。だって、移ったら集英社といろいろ揉めるじゃないですか。「とりあえず5:5だったらいいよ」ってゴネて(笑)。で、当時もほかの雑誌でヒット飛ばして、「そっちは5:5ですよ」って言って、原作者って対等なんだっていうのが「ジャンプ」のほうでもわかってきたところもありますからね。

──「ジャンプ」の専属契約も無視したんですよね。

武論尊 だから史村翔って名前を作って飛び出したわけ。あれも「ドーベルマン刑事」の全盛期だから、向こうが専属契約を結べって言ったって、「じゃあ連載やめます」って言えば俺の要求のほうが飲まれますから。それで、「‥‥じゃあペンネームは変えろ、おまえだけ特例にするから」ってことになって。そのせいか「ジャンプ」は「北斗の拳」が終わってから1回もオファーが来てないです。

──なぜですかね?

武論尊 嫌われたんでしょうね(笑)。しかも担当の堀江君(注・現コアミックス社長の堀江信彦氏)が編集長になってるんですよ? よっぽど俺のこと嫌いだったんだろうな。だから「ジャンプ」が600万部とかいってた、あの一番いい時代って俺は書いてないんです。

 

プロインタビュアー 吉田豪

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