政治

歴代総理の胆力「村山富市」(2)米紙「ミイラ政権」と酷評

 一方、安定政権ではあったが、身の丈に合わなかったことも多々あった。その最たるものが、未曽有の阪神・淡路大震災、オウム事件に直面したが、危機管理という点ではほぼ無力であった。総理になるまで官邸にほとんど顔を出したことはなく、当然、官邸の情報収集システムにさえうとかったのだから、ムリもない。村山はオロオロするばかりで、事実上、そうした対応は自民党がすべて仕切ったものだった。

 また、沖縄の駐留米兵による少女暴行事件が起こり、この「沖縄問題」は一つ間違えば日米関係がゆがみかねなかったが、やはり自ら手を打つ姿勢は示さず、いたずらに沖縄の“不満”を聞くにとどまる形になっている。すでに、この間の平成7年4月の統一地方選で足元の社会党が敗北、一方で社会党内のゴタゴタも目立ち、この頃には村山自身の政権維持への気力もなえたようだった。

 そうした中、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、次のように報じたものだった。

「無気力な対応しかできぬ村山政権は、もはや“ミイラ政権”である」

 政権末期、村山と親しかった政治部記者は、村山のこんな問わず語りの声を聞いている。

「『家内には苦労をかけた。働きに働いて私を支えてくれた家内が可哀想でならない。選挙区(大分県)の100年以上経つボロ屋を建て直し、ホッとさせてやりたい』と。総理は元々、物事に執着のない人だから、精一杯やればそれでいいんじゃないかとの思いが窺えた」

 退陣後は、社会党を社民党と党名変更、党勢の新たな拡大を策したが、世の追い風はなかった。白く長い眉毛で「トンちゃん」と親しまれた村山は現在96歳、なおかくしゃくとしている。

 今や“風前の灯”の社民党が、唯一の心残りでもあるようだ。

■村山富市の略歴

大正13(1924)年3月3日、大分県生まれ。学徒出陣、明治大学専門部卒業。大分市議、県議を経て、昭和47(1972)年12月、社会党より衆議院議員初当選。平成6(1994)年6月、村山連立政権組織。総理就任時70歳。平成12(2000)年6月、政界引退。現在は社民党名誉党首。

総理大臣歴:第81代 1994年6月30日~1996年1月11日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

カテゴリー: 政治   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<夏ウツ>日照時間の長さが睡眠不足と関係!?

    340060

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<めまい>ストレスや睡眠不足で耳鳴りや難聴も!?

    339610

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<胃の不調>寒暖差ストレスで自律神経の乱れ!?

    336213

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「イラン空爆」を目の当たりにした金正恩が恐怖におののくトランプの「地下シェルター爆死作戦」
2
中居正広が性暴力直後に被害女性に送っていた驚くべき「会いたいメール」と「拒絶返信」
3
高木豊が断言!巨人「捕手4人のうち1人が2軍行き」なら落ちるのは「このベテラン」
4
阪神・近本光司「兄が淡路島で日本料理店」発信と今オフ「FA移籍市場」の深い関係
5
開始当初から激変した「ダウンタウンDX」最後はあまりに「浜田の愛なし」だった