政治
Posted on 2020年06月11日 09:55

歴代総理の胆力「村山富市」(2)米紙「ミイラ政権」と酷評

2020年06月11日 09:55

 一方、安定政権ではあったが、身の丈に合わなかったことも多々あった。その最たるものが、未曽有の阪神・淡路大震災、オウム事件に直面したが、危機管理という点ではほぼ無力であった。総理になるまで官邸にほとんど顔を出したことはなく、当然、官邸の情報収集システムにさえうとかったのだから、ムリもない。村山はオロオロするばかりで、事実上、そうした対応は自民党がすべて仕切ったものだった。

 また、沖縄の駐留米兵による少女暴行事件が起こり、この「沖縄問題」は一つ間違えば日米関係がゆがみかねなかったが、やはり自ら手を打つ姿勢は示さず、いたずらに沖縄の“不満”を聞くにとどまる形になっている。すでに、この間の平成7年4月の統一地方選で足元の社会党が敗北、一方で社会党内のゴタゴタも目立ち、この頃には村山自身の政権維持への気力もなえたようだった。

 そうした中、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、次のように報じたものだった。

「無気力な対応しかできぬ村山政権は、もはや“ミイラ政権”である」

 政権末期、村山と親しかった政治部記者は、村山のこんな問わず語りの声を聞いている。

「『家内には苦労をかけた。働きに働いて私を支えてくれた家内が可哀想でならない。選挙区(大分県)の100年以上経つボロ屋を建て直し、ホッとさせてやりたい』と。総理は元々、物事に執着のない人だから、精一杯やればそれでいいんじゃないかとの思いが窺えた」

 退陣後は、社会党を社民党と党名変更、党勢の新たな拡大を策したが、世の追い風はなかった。白く長い眉毛で「トンちゃん」と親しまれた村山は現在96歳、なおかくしゃくとしている。

 今や“風前の灯”の社民党が、唯一の心残りでもあるようだ。

■村山富市の略歴

大正13(1924)年3月3日、大分県生まれ。学徒出陣、明治大学専門部卒業。大分市議、県議を経て、昭和47(1972)年12月、社会党より衆議院議員初当選。平成6(1994)年6月、村山連立政権組織。総理就任時70歳。平成12(2000)年6月、政界引退。現在は社民党名誉党首。

総理大臣歴:第81代 1994年6月30日~1996年1月11日

小林吉弥(こばやし・きちや)政治評論家。昭和16年(1941)8月26日、東京都生まれ。永田町取材歴50年を通じて抜群の確度を誇る政局分析や選挙分析には定評がある。田中角栄人物研究の第一人者で、著書多数。

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