スポーツ

世界の福本豊<プロ野球“足攻爆談!”>「『人的補償』という言葉は大嫌い」

 西武からFA宣言した森友哉のオリックス入団が決まった。4年総額18億円の破格条件と報じられている。僕らの時代では考えられないすごい額やけど、オリックスには皮算用があったと思う。吉田正尚がポスティングシステムによるメジャー移籍を目指しており、交渉がまとまれば、球団に譲渡金が入ることになる。日本一になったチームはCS、日本シリーズでも潤った。強打の捕手を獲得するための資金はたっぷりあったということ。

 地元・大阪に帰ってきた森が、実力どおりに働けばオリックスの3連覇は見えてくる。19年に首位打者を獲得した打撃は、小さな体を目いっぱい使ったパワフルなスイングが特徴。若い頃はリードがどうのこうのと言われたけど、試合経験を積んでキャッチャーとしての守りもしっかりしてきた。立ち居振る舞いからは負けん気の強い性格が伝わってくる。強気のリードでインコースをどんどん突いてくるイメージがあってオリックスの福良GMも捕手として高く評価しているという。

 少し不安があるとすれば性格にムラっけがあることやな。年度別の打撃成績にも表れている。18年以降、最近5年の打率は275⇒329⇒251⇒309⇒251。投手では工藤公康のように隔年で成績を残す選手がいるけど、野手でこれだけ極端なのは少ない。ましてや捕手は冷静沈着なタイプが多いだけに、なおさら珍しい。今年は途中交代のあとに投げ捨てたマスクで指を骨折して離脱するなど、最悪の1年やった。順番からすると来年はいい年になるはずやけど、そう簡単にはいかないと思う。

 来年3月31日の開幕戦は敵地で古巣の西武が相手やから、森にとってはやりづらい。スタンドからブーイングを浴びるまではないだろうが、西武投手陣は意地でも打たれたくないと、激しい内角攻めが予想される。性格や球筋は知り尽くしているとはいえ、なかなか簡単には打てないと思う。吉田正尚が抜けた場合はマークが集中する危険性もある。西武時代は山川ら強打者がそろっていたけど、オリックスはどちらかというと貧打やから。ラオウ杉本がしっかり中軸の役割を果たせるかどうか。今年みたいにフラフラしていたら、森への負担は大きくなりすぎてしまう。

 ただ、リードのほうは問題なくやれるはず。エースの山本由伸はどの球種も一級品やし、日本シリーズでブレイクした宇田川のように、若手はストレートとフォークという力で押すタイプが多い。森がリードで頭を悩ますことは少ない。捕手出身の中嶋が監督をやっていることも、森にとってはプラス材料になる。キャッチャーとして、一皮むけるためのアドバイスをもらえる。それと中嶋は厳しい面もあるから、やんちゃなタイプの森をうまくコントロールできると思う。

 あとはFAの人的補償で誰を持っていかれるか。オリックスは有望な選手が多いからプロテクトに頭を痛めることになる。

 でも、この人的補償という言葉は嫌いやな。補償で移籍する選手が可哀想や。ドラフトの「外れ1位」とかも同じ。ここ最近の日本は「これのどこが差別用語なん?」と首をかしげるほど言葉狩りが過ぎる傾向があるけど、それなら野球選手の気持ちも少し考えてあげてほしい。人的補償に替わるいい言葉が生まれればいいんやけどな。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
2
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
3
ボクシング・フェザー級「井上尚弥2世」体重超過の大失態に「ライセンスを停止せよ」
4
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
5
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか