社会

「集団的自衛権」行使容認で日本人傭兵が“戦地の真実”を警告(3)銃は非力な者に力を与える

 実際に住民が軍人に銃を向けてきたらどうするのか。万が一、子供や女性が向けてきた場合は──。鈴木氏はきっぱりと断言した。

「武装した相手が攻撃するかのような行動を取ったら、速やかに攻撃に移ります。こちらが一瞬でも躊躇すれば、自分や同僚がやられる可能性があるわけですから。そもそも、相手も軍人に銃を向ける行為をしたら、どのような結果になるかは常識でわかるはずですから、やむをえません。銃は非力な者に力を与える道具で、子供や女性が撃とうとも威力が変わるわけではないのです」

 とはいえ、やはり子供や女性が相手では、引き金を引くことに戸惑う兵士もいるはずだ。実戦経験の少ない自衛隊員がこのような局面にさらされれば、なおさらだろう。

「もちろん個人差はあるでしょう。ただ、そもそも戦闘行為が任務の軍人には時として冷徹な判断が必要です。それが平気でできないならば、最初から軍人なんかになってはいけないということですよ」

 平和ボケした日本人、そして行く末が案じられる自衛隊員に突き刺さる「戦地の真実」である。

 さらに海外の紛争地などで警戒しなければならないのは、正体不明の武装組織やテロ組織による不意打ち的なゲリラ、テロ攻撃である。最近では、路肩に爆弾を仕掛けて遠隔操作で爆発させる、自動車に爆弾を積んで自爆、女性が爆薬を体に巻いて自爆を敢行するなど攻撃形態はさまざまだ。

 過去に自衛隊がイラクに派遣された時も、路肩に仕掛けられた爆弾が陸上自衛隊の車列通過時に爆発した。幸い、高機動車のフロントガラスにひびが入る程度の被害だったが、そんな実例もあった。

 こうした攻撃は常に意表を突いてくるため、狙われたら避けにくいのも現実だ。しかし、鈴木氏はむしろこうした事態そのものより発生後の危険性を指摘する。

「この手の攻撃を受けて死者、負傷者が発生すれば、どうしても部隊全体が過敏になります。そうすると、例えばテロを行おうとしているか断定できないけれども、不審な動きをする車両をとっさの判断で銃撃し、そのあとで特に関係のない民間車両だったとなる事態も起こるのです」

 鈴木氏によると、どの国の軍でもこうした不測の事態は一定割合で発生することを想定し、誤射もやむなしと判断しているという。そればかりか、戦地の極度に張り詰めた緊張状態で、精神を平静に保っていられないこともあるという。

「あくまで噂レベルですが、以前、ある国の兵士が派遣国で宿営地を囲む有刺鉄線の向こうで手マネ足マネでバカにしてきた住民をカッとなって射殺し、遺体を鉄線の内側まで引きずって、侵入してきたから射殺したとして処理したこともあるようです」

 陸上自衛隊の事実上初の国際活動からすでに20年以上が経過した。当初から比べれば、自衛隊の紛争地活動も練度は上がっているはずだ。しかし、鈴木氏はこう一笑に付した。

「国内での訓練では練度が上がっているかもしれないが、現場での場数はまだ少ない自衛隊が、いざ戦闘地域でどれだけ冷静に対応できるかは未知数でしょう」

 自身の生命の危険もあれば、人をあやめる事態も訪れる。集団的自衛権の行使解禁後、自衛隊が派遣される紛争国には数多くの予測不能な危険が潜んでいることを知っての閣議決定だろうか。

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