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掛布雅之 7月はタイガース全体がゾーンの状態に(2)

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 7月の8連勝は梅野だけでなく、チームにとっても「ゾーン」に入った状態でした。だからこそ残念なのは、マエケンが先発予定だった10日の広島戦(甲子園)が台風接近で流れたこと。相手がエースの前田で、こちらはローテの谷間でプロ初先発の金田。分が悪いのは誰が見てもわかり、中止でラッキーと思うファンも多いでしょう。でも、私はさきざきのことを考えると流したくない一戦でした。

 ここでマエケンを打ち崩せば、CSや9月、10月のシーズン大詰めにも優位に立てたのです。逆に今の状態でも完璧に抑えられるようだと、根本的に対策を練り直す必要があるということです。9連戦中でチームの体力的には大きな「休み」となりましたが、対前田を考えると、台風を恨んでしまいます。

 阪神が巨人への挑戦権を得るためには、まず現在2位を争う広島を倒さなければいけません。そして、その最大の壁がエース・前田です。前田さえ攻略できれば、倒すのが難しい相手ではありません。開幕当初は安定していた大瀬良、バリントンの3本柱で勝てなくなったからです。

 7月8日の甲子園で先発した大瀬良の投球は、5月までとは別人のようでした。初球からコーナーを狙いすぎて、ボール先行の投球。不利なカウントでストライクを取りにいったところを痛打されるという典型的な「小さい投球」でした。彼の場合は失投でも抑えられる球威があるのです。ど真ん中のストレートでファウルを打たすぐらいの気持ちで投げないと、持ち味は出ません。敵ながらあっぱれなルーキーとして見ていたので、今の状態には少し寂しさを感じました。

 阪神は7月11日からの巨人(東京D)との3連戦にも勝ち越し、後半戦に向けて大きな弾みをつけることができました。13日の試合は関本の代打逆転満塁ホームランが飛び出すなど、年に何回もないドラマチックな勝利でした。関本は私とともに今年の高知・安芸春季キャンプで二軍の若手と汗を流していた選手です。黙々と練習する姿を見てきましたから、代打の切り札として活躍する姿はうれしいかぎりです。

 球宴明けの後半戦に優勝争いに加わり、制するためには、関本のようにレギュラー以外の選手の活躍が不可欠です。それが「チームのスタミナ」となるのです。阪神は他球団と比べても選手層は決して薄くありません。あとはいかにベンチがうまく使い切るか。チーム一丸で打倒・巨人を果たしたいものです。

阪神Vのための「後継者」育成哲学を書いた掛布DCの著書「『新・ミスタータイガース』の作り方」(徳間書店・1300円+税)が絶賛発売中。

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