エンタメ

テリー伊藤対談「作曲家・新垣隆」(2)佐村河内氏はいつから“全聾”と言っていた?

20140814_21m

テリー 最初に佐村河内さんと会った時は、どんな印象でした?

新垣 いちばん最初は、彼は「自分は音楽家であるんだけども、食事をしないんだ」って言ったんです。そういう自己紹介をしたわけなんですね。

テリー え?「俺はあんまり食事をとらない」と?

新垣 いえ「一切食べない」と。

テリー でも、ずいぶん太ってるじゃないですか。

新垣 そうですね(笑)。それは18年も前ですから、まだ彼も若かったんですけど。

テリー 仙人みたいなものだっていうアピールなのかな? 初めから、ウソをついているじゃないですか。

新垣 だからいちばん最初の段階で、彼との間には心理的な壁を作ってしまったんです。なので「深いところでつきあった」ということはなかったですね。お互いが、うわべの部分だけでやり取りをしていたような感じでした。

テリー 彼はいつから「自分は全聾(ろう)だ」と言っていたんですか。初めから? それとも、ある時から言いだしたんですか。

新垣 ある時からですね。十数年前に、ゲーム音楽が少し話題になったり、少しヒットしたりということがあったんです。その時に初めて「実は全聾だ」ということを言ってアピールしようとしたんですね。

テリー 「俺は耳が不自由なんだ」ということを営業戦略にしようと。

新垣 はい。そしてそのことは、外部には言わないという約束だったわけです。

テリー 考えてみたら、プロレスラーが「墓場から来た死者」とか「人を10人殺した」とかキャッチコピーを言ってるのに近いですよね。

新垣 同じだと思います。でも、その戦略があっても、結局はあまりうまくいっていなかったんですよ。だから私としても「目立たないし、小さな業界でごちゃごちゃやってるぐらいだったらいいかな」という、とても甘い考えだったんです。作曲をして、作曲料をもらうだけの関係なんだと。でも3年前に「交響曲第一番 HIROSHIMA」のCDが発売されて、そこからこの問題が表面化していきました。

テリー 全聾の作曲家として、NHKのドキュメンタリー(NHKスペシャル「魂の旋律~音を失った作曲家~」)で取り上げられたことも、CDの大ヒットにつながりましたよね。あの番組は見ましたか?

新垣 見ました。見た時点で「これはもういけないな」と。「このまま続けていったら大変なことになるな」と思いました。もうその時点で、大変なことにはなっていたんですけど。ただ、外へとアピールしていく彼の営業的な部分は、一切ノータッチで来てしまったものでしたから。

テリー 「新潮45」(新潮社)に音楽評論家の野口剛夫さんの書いた記事(「『全聾の天才作曲家』佐村河内守は本物か」)が出ましたよね。あの記事での指摘は、ずいぶんとショックだったんじゃないですか。

新垣 まだ世間的には称賛の声が大きかったんですけど、わかる人はわかるんですよね。自分の周りの音楽専門家が見れば、彼が作っているというのは、ありえないわけなんです。実際にそういったツッコミも、あるにはありました。ただ、メディアという形では表に出ていなかったんですね。

テリー それこそ「現代のベートーベン」とか言われて、そのイメージのほうがとにかく大きかったよね。

新垣 野口さんは私ともまったく面識がなかったんです。そういう方がほとんど本当のことを言い当てていて、それを記事にしたということで「これはオセロゲームの四隅を取られちゃった状態だな」と思いました。

テリー 佐村河内さんには、すぐに電話をしたんですか。

新垣 連絡しました。その頃、自分はもうやりたくないという気持ちがあったので、こちらから連絡を絶っていたんです。彼からは次の打ち合わせをしたいという連絡が連日来るんですが、シャットアウトしていました。その時にちょうどあの記事が出たので、やはり「このまま続けるのは難しいです」と伝えたんです。

テリー そうしたら彼は?

新垣 彼は「なるほど」と言ったんですけど、「でも、これはまだ小さな声であって、大したことはないんだ」ということを言いました。

テリー う~む。度胸があるというか、ずうずうしいというか‥‥、あの時点でまだそんなことを言ってたんですか。

新垣 当時、彼は作曲家としてもやっと認められて、報道機関からいろんなオファーを受けていたので、ここで「世界進出をするんだ」みたいなことを考えていたんでしょう。

カテゴリー: エンタメ   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
あの「号泣県議」野々村竜太郎が「仰天新ビジネス」開始!「30日間5万円コース」の中身
2
3Aで好投してもメジャー昇格が難しい…藤浪晋太郎に立ちはだかるマイナーリーグの「不文律」
3
「コーチに無断でフォーム改造⇒大失敗」2軍のドン底に沈んだ阪神・湯浅京己のボコボコ地獄
4
【大騒動】楽天・田中将大が投げられない!術後「容体不良説」も出た「斎藤佑樹との立場逆転」
5
完熟フレッシュ・池田レイラが日大芸術学部を1年で退学したのは…