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Posted on 2023年06月03日 09:56

世界の福本豊<プロ野球“足攻爆談!”>「スタンディングダブルなんて要らん」

2023年06月03日 09:56

 球界の先輩の訃報が5月に相次いだ。元西鉄の中心打者で指導者としても名を馳せた「怪童」中西太さん。それに「ミスターフライヤーズ」と称された元東映の毒島章一さん。2人とも現役時代の晩年しか重なっていないので、僕からは話しかけるのも恐れ多いスター選手やった。もうお会いすることはできないが、若い野球ファンにも2人の名前は覚えておいてほしい。

 中西さんはコーチ、監督として、数々の球団で実績を残したけど、残念ながら僕は同じユニホームを着たことはなかった。それでも根っからの教え好き。近鉄のコーチ時代には敵の選手やった僕にまでアドバイスをくれた。「調子はどうや?」と話しかけてくれて、スイングを見てくれる。「今のでええぞ」と誉めてくれるので、気分よく試合に臨めた。実際にゲームでヒットを打つと、ベンチでうなずいてくれた。若松や掛布ら、数々の超一流打者を育てた名コーチ。機会があれば、僕ももっとバッティングを教わりたかった。

 実はプロ入り前から中西さんに衝撃を受けたことがある。社会人時代、後楽園での都市対抗のために泊まった東京のホテルが西鉄と同じやった。たぶんパチンコか何かして帰ってきたら、素振りをしている中西さんと会った。「ブンッ」と今まで聞いたことのないスイング音。こちらは当時、プロ入りなんてまったく考えていなかったガリガリの社会人野球の選手。「やっぱりプロのパワーはすごいな」と実感させられた。

 毒島さんとは、ほとんど話す機会はなかったが、僕にとっては縁のある偉大な選手やった。詳細は忘れたけど、阪急時代にベンチ前に並ばされて、毒島さんの三塁打の記録の表彰に拍手を送ったことがあった。毒島さんの持っていたプロ野球歴代最多の通算三塁打数は「106」。「それぐらいやったら狙えるんちゃう」と正直思った。後に立浪に抜かれるまで通算二塁打数のプロ野球記録も作ったけど、数は意識していなかった。でも、三塁打の記録は狙って「115」という記録を残すことができた。

 その記録に近づくような選手が現れたら、2位の毒島さんの名前もランキング表などに出てくるんやけどな。僕は右中間への当たりは常に最初から三塁打を狙っていたし、左中間を破った打球でも隙あらば狙っていた。今は積極的に三塁打を狙う選手が減っている。僕らの時代より球場が広くなっているし、もっと増えてもいいんやけど。現役最多が巨人・松田宣浩の「67」では寂しい。1年で10個で10年続けたら100個。他の記録よりは狙いやすいと思うけどな。

 最近の野球中継でアナウンサーがよく使う「スタンディングダブル」という言葉もよくない。滑り込まずとも楽々二塁打の時に使う表現やけど、僕が気に入らんのは、二塁ベース手前でスピードを緩めてしまうこと。カッコばかりつけて三塁を狙うつもりが最初からない。これでは三塁打の数は増えるはずがない。

 ホームランは「野球の華」と言われるけど、球場観戦でファンが盛り上がるのは三塁打のシーン。二塁を回った時に、ワーッと歓声が上がり、中継プレーも守備の見せどころとなる。三塁打には、テレビ観戦では伝わらない面白さがある。もっと貪欲に三塁を狙ってほしい。「三塁打の毒島」と呼ばれた大先輩の死去で、改めて思う。

福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。

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