大谷翔平所属のドジャースとMLBの盟主ヤンキースの43年ぶりの顔合わせとなったワールドシリーズ(WS)が、日本国内で話題沸騰中だ。第2戦の盗塁失敗による大谷の亜脱臼は、まるで国民全員の心配事のような過熱報道ぶりなのである。
今年のWSは伝統の人気チームの顔合わせに加え、大谷とアーロン・ジャッジという両チームが誇るスーパースターのマッチアップが注目されたことで、全米の視聴者数は近年のWSでは群を抜いている。
全米中継したFOXによると、放送局による生中継、スペイン語放送、ストリーミングなどを合算した第1戦の視聴者数は1520万人、第2戦は1380万人。これは2018年の「ドジャーズ×レッドソックス」以来の高視聴者数ということで、日本国内では大谷効果を盛り上げる意味で「記録的な視聴者数」と報道している。
だが同時に、43年前の両チームによるWSの視聴者数が6試合平均で4130万人だったことが伝えられると「この盛り上がりで半分以下なのか…」「やっぱりアメリカでの野球人気低下は事実だった」と、意気消沈する声が。
今回の全米の視聴者数は、日本のメディアが騒ぐほどのことではないのだろうか。全米スポーツに詳しいスポーツライターが言う。
「アメリカは視聴率というより視聴者数で計られますが、近年、MLBの視聴者数は本当に少なかった。スポーツメディアサイトによると、2022年のWS『アストロズ×フィリーズ』は平均1000万人を超えましたが、昨年の『レンジャース×ダイヤモンドバックス』は第5戦が1148万人を記録したものの、他の試合は1000万人未満。ところが、今年のWSは2戦平均で1400万人を超えている。記録的ではないですが、大幅アップという報道は間違ってはいません」
近年の低迷ぶりからすると十分に褒められる数字だというわけだが、なんといってもアメリカンフットボールのNFLが肩で風を切る国。前出のスポーツライターが、その驚くべき視聴者数を明かす。
「アメリカの人口は約3億3000万人。そのうちの何人が見ているかがViewerの数、いわゆる視聴者数となります。昨年のNFL最大イベント『スーパーボウル』の視聴者数は1億1217万人。国民の3人に1人が見ていたことになり、MLBのWSより1億人以上多かったわけです。ちなみに、昨年のスポーツ中継視聴者数50位までは、全てNFL。その50位でさえ2061万人ですから、今回のWSと比べて、アメフトの異常なまでの盛り上がりがわかります」
とはいえ、今年の「ドジャース×ヤンキース」は、2024年の視聴者数ランキングで「トップ10に入る可能性が高い」と、前出のスポーツライターは言うのだ。まさかNFLの視聴者数が激減しているということなのか…。
「全米スポーツ中継の視聴者数ランキングは、全体のものと、NFLを除いたものの2つのランキングが常に発表されることが多いのです。そのぐらい、NFLが圧倒しているからです。NFLを除いたランキングでさえ、近年のMLBは上位進出できず、昨年はWS第5戦が13位。その上に学生アメフト、NBA、学生バスケが数試合、さらに競馬のケンタッキーダービー、ゴルフのマスターズがランクされていました。しかし昨年6位のNBAファイナル第5戦が約1400万人だったことを考えると、今年の『ドジャース×ヤンキース』が軒並みトップ10に入る可能性がありますね」
近年、人気で大きく水をあけられたと言われているバスケットボールと、今回ばかりはベースボールが肩を並べたと言っていい。
2戦を終えてドジャースが連勝。第3戦以降にヤンキースが巻き返せば、さらに視聴者数が増える可能性はある。大谷フィーバーの締めくくりを数字面でも期待したいところだ。
(高木莉子)