社会

ホントーク〈藻谷浩介×名越健郎〉(3)輸出額は最高水準で日本は衰えてない

名越 2025年は昭和で言うと「昭和100年」になりますが、日本はどうなるでしょう? 本書には「日本は言われるほどまだ落ちぶれてなくて、まだ『実力』がある」と書かれています。

藻谷 「日本は衰えた」と皆さんおっしゃいますが、輸出額も経常黒字も、ドルで見ても円で見ても史上最高水準なのです。衰えているのは、そういう基本数字を見ずに、いい加減な伝聞を振りまく「識者」の頭だけですよ。製造業の競争力は最強ですし、化石燃料輸入も減っています。

名越 国際競争で日本が破れることはないんですか?

藻谷 以上のような数字を指摘するたびに、「来年はだめになる」と言われて17年。一向にダメになっていません。噂を信じて数字を見ないのはやめてほしいですね。米国、中国(香港含む)、韓国、台湾、インド、ドイツ、英国、すべて日本の方が黒字ですよ。

名越 となると、日本の最大の問題は、やはり人口減少ですか。

藻谷 そうです。日本の0歳〜4歳は50年前に比べて、すでに6割も減っています。「これから日本は本格的な人口減少時代に突入する」という人がいますが、冗談ではない。人口減少時代に突入して、もう半世紀過ぎているのです。50年後には、50代が今に比べて6割減ります。言い換えますと、日本の50代以下は、10年ごとに12%ずつ減るのが確定しています。

名越 人手不足がさらに深刻化します。

藻谷 その通りで、もはや移民を受入れてどうかなるレベルではありません。それにしても、どうして日本人は明らかな数字を確認しないのでしょうか。他人が言っていることを、検証せずに、そのまま覚えてしゃべっているというのでは、ChatGPTと同じです。その結果、斎藤元彦兵庫県知事の不信任と再選に見られたように、世間の空気が変わると、自分の意見もコロッと変わる。

名越 極悪人扱いから、いまや悲劇のヒーローですからね。

藻谷 実際の彼が、パワハラ体質であることは明らかで、だから偉くしてはいけない人なんですけどね。そんな日本は、ジョージ・オーウェルの小説「1984」に書かれたディストピアに似ています。街頭ラジオを通じて言われる支配者の言葉通りに、国民全員が言うことを一瞬にして変える社会。これは昭和20年8月の日本とそっくりでもありますね。

名越 ラジオが今はSNSに変わったんですね。

藻谷 そうです。インターネット上のフェイクを事実だと信じる軽率な人が、政治家を選ぶ社会。それで失敗すると、クルッと言うことが変わる。安倍氏のインフレ誘導を絶賛していた人が、一転して物価高に文句を言う。こんなことでは、〝斎藤現象〟みたいなことがもっと大規模に起きるような嫌な予感がします。

名越 その予感が外れることを願っています。2025年は、ますますSNSの使い方も重要になってきますね。

藻谷 本当にその通り。私は参考にしません(笑)。

ゲスト:藻谷浩介(もたに・こうすけ)1964年山口県生まれ。地域エコノミスト。東京大学法学部卒業。日本総合研究所主席研究員。平成大合併前の約3200市町村のすべて、世界136カ国を自腹で巡り、地域特性を多面的に把握。地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行っている。「デフレの正体 経済は『人口の波』で動く」「和の国富論」など著書多数。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)、「独裁者プーチン」(文春新書)など。

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