社会

ホントーク〈藻谷浩介×名越健郎〉(2)超円安の原因はアベノミクス!

名越 この本は毎日新聞の「時代の風」に連載された名物コラムの9年分に、新たに解説を加えてまとめています。増刷もされたそうで、評判が高いですね。

藻谷 ありがとうございます。連載を始めた16年5月は、安倍政権が無謀な異次元金融緩和に深入りしている時期でした。

名越 藻谷さんは、アベノミクスや対ロシア政策、「モリカケ」問題、それからコロナなど、あらゆる点で安倍政権に対して非常に厳しい見方をされています。しかし国政選挙では、安倍政権は4勝0敗と、すべて勝っています。国民は安倍政権に騙されたということでしょうか?

藻谷 今さら「騙された」と被害者ぶるのはいかがなものでしょうか。政治家は有権者のレベルを反映する存在です。安倍氏は、女性活躍推進のように正しい政策もしましたが、はるかに多くの愚かな政策を手掛けました。しかしそうさせたのは、有権者なのです。

名越 確かにアベノミクスでGDPの低下や円安を招いたのは事実ですね。

藻谷 野田政権当時にバブル時の2倍にまで増えていた日本のGDP(ドル建て)は、安倍氏再登板以降の10年間で、3分の2にまで低下しました。ドイツやインドに抜かれ、1人当たりのGDPでは韓国にも追いつかれました。「悪夢の民主党政権」という話と真逆で、これは「悪夢の異次元金融緩和」の結果です。

名越 円安についてはどうですか? 石破総理になってからも、ますます円安になっています。

藻谷 原因は、異次元金融緩和のもたらした低金利です。ですが安倍氏が日銀や年金基金に国債と株をバンバン買わせたので、いま金利を上げると日銀も政府も、年金も破綻します。

名越 中央銀行が株と国債を買うなんて、世界のどこを見渡してもやってないことですよね。

藻谷 日本は年間20兆円台の経常収支黒字なのに、金利を上げられないので、稼ぎはドル投資に回り、国内経済は活性化しません。

名越 アメリカの金利が下がってこないかぎり、円安は続くということですか。

藻谷 はい。誰が総理でも日銀総裁でも、当分、立て直しようがありません。「モリカケ」の時点で安倍氏が退陣すれば、この事態は避けられたのですが。

名越 安倍さんの政治主導は失敗だと言えますか?

藻谷 政治家主導と称して実際には今井首席秘書官以下の、官邸官僚の思うがままでした。しかし、彼ら官邸官僚も、経済感覚も外交感覚も欠いていたのです。

ゲスト:藻谷浩介(もたに・こうすけ)1964年山口県生まれ。地域エコノミスト。東京大学法学部卒業。日本総合研究所主席研究員。平成大合併前の約3200市町村のすべて、世界136カ国を自腹で巡り、地域特性を多面的に把握。地域振興や人口問題に関して精力的に研究、執筆、講演を行っている。「デフレの正体 経済は『人口の波』で動く」「和の国富論」など著書多数。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)、「独裁者プーチン」(文春新書)など。

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