「カトマンズに飛ばされて 旅嫌いな僕のアジア10カ国激闘日記」古館佑太郎/1980円・幻冬舎
アナウンサー・古舘伊知郎氏の長男で、ロックバンドのボーカルとして歌手デビュー後、俳優としても活躍している古舘佑太郎。昨年2月にバンドを解散すると、大先輩の“命令”により、アジア10カ国の旅へ出発することに─。
魚住 古舘さんはミュージシャンとして活動されてきて、俳優としてNHKの朝ドラ「ひよっこ」(17年)や映画などにもご出演されています。今回はネパールのカトマンズを目指してアジアを旅された時の日記をもとに、出版されました。
古館 お世話になっていたロックバンド「サカナクション」の山口一郎さんに、僕がバンドを解散する報告に行った時「カトマンズに行け! お金は俺が出すから」と言われたことがきっかけでした。
魚住 旅先では共同宿に泊まったり、寝台バスで知らない人とくっついて寝たりと、過酷な状況だったみたいですね。そもそも、東京出身のおぼっちゃま育ちで、電車のつり革にも触れない潔癖症。さらに旅嫌い‥‥。それなのに、よく2カ月間も旅をすることができましたね。
古館 「せっかくなら、いろいろなところを回って行け」と山口さんに言われまして。許してもらえる最短期間が2カ月だったんです(笑)。「途中でお金が足りなくなったら追加で送る」とも言ってくれましたけど、それを受け取ってしまったら期間を延長されそうだったので、なるべく安い宿に泊まって、余ったお金を返そうと思っていました。
魚住 最初に着いたタイのバンコクで過呼吸になったり、じんましんが出たそうですね。
古館 タイがキツイんじゃなくて、自分が引きずってきた過去と、これから自分はどうなるのか、という未来への恐怖が原因だと思います。現地では日本での実績などは通用しないし、未来のことを考えても、明日、自分がどこで寝ているかもわからない毎日でした。
魚住 バスが6時間も遅れて到着するとか、旅先では、予定どおりにはいかないことが多いですよね。
古館 未来のことを不安がっても意味がないと思っていくうちに、これまでいかに「今、この瞬間」を意識しないで生きてきたのか、ということに気づかされましたね。
魚住 タイ以外でも寝台列車に無数のゴキブリや、ホテルの部屋に蚊が100匹以上出たりしたそうですね。
古館 蚊はラオスでしたが、僕の体質なのか、まったく刺されなかったんです。
魚住 それは謎ですね。高山病の頭痛もつらそうでしたけど、過酷な経験をされながらタイ、カンボジア、ベトナム、ラオス、中国、バングラデシュと回られて、目的地のカトマンズに到着します。ここで旅は終わりかと思ったら、インドのガンジス川で沐浴するという目的を決めたのには驚きました。
古館 1カ月でカトマンズに着いてしまったので、これで日本に帰ったら、一郎さんから別の場所へ行かされそうだったので(笑)。インドからスリランカを回って、タイから日本に帰って来ました。
ゲスト:古館佑太郎(ふるたち・ゆうたろう)1991年、東京都出身。08年、バンド「The SALOVERS」を結成しデビュー(15年に活動停止)。17年に新たなバンド「2」を結成(24年2月に解散)。俳優としては14年、映画「日々ロック」でデビュー。以降、NHK連続テレビ小説「ひよっこ」、NHK大河ドラマ「光る君へ」などに出演。主演映画に「いちごの唄」「アイムクレイジー」などがある。
聞き手:魚住りえ(うおずみ・りえ)大阪府生まれ、広島県育ち。慶応義塾大学文学部卒。1995年、日本テレビにアナウンサーとして入社。報道、バラエティー、情報番組などで幅広く活躍。04年に独立し、フリーアナウンサーとして芸能活動をスタート。30年にわたるアナウンスメント技術を生かした「魚住式スピーチメソッド」を確立し、現在はボイス・スピーチデザイナーとしても活躍中。