スポーツ
Posted on 2025年02月22日 05:56

二宮清純の「“平成・令和”スポーツ名勝負」〈Jリーグ史に残るレオ様の神業〉

2025年02月22日 05:56

「鹿島アントラーズ VS 横浜フリューゲルス」ニコスシリーズ第19節・1995年11月1日

 1994年米国W杯でブラジルは4回目の優勝を果たした。王国の「10番」ライーは、ほとんど機能しなかったが、それを補って余りある仕事をしたのが両サイドバックだった。

 右に陣取るジョルジーニョは、どの試合でもアクセルを目いっぱいに踏んで右サイドを駆け上がり、その余勢を駆って何度もペナルティーエリアを蹂躙した。

 ドリブル突破良し、クロス良し。守備も堅実で相手アタッカーにボールは持たせても、決定的な仕事はさせなかった。

 決勝トーナメント1回戦の対米国戦で退場処分を受け、準々決勝以降の試合には出られなかったものの、左のレオナルドはサイドバックの仕事に革命をもたらした。タッチラインを駆け上がるだけでなく、ペナルティーエリア付近に切り込んで、ゲームメークまで難なくこなしてみせた。

 彼の出現は、サイドバックが将棋でいう「香車」から「飛車」の時代に突入したことを高らかに告げるものだった。

 W杯終了後、そのレオナルドがJリーグの鹿島アントラーズにやってきた。FCバルセロナ、ACミランからも誘いを受けたが、神様ジーコからのオファーを優先した。

 今でも語り草のシーンがある。1995年11月1日、カシマサッカースタジアム。ニコスシリーズ第19節の横浜フリューゲルス戦。3対1と鹿島リードの後半38分、Jリーグ史に燦然と輝くスーパープレーが飛び出した。

 ペナルティーアーク付近でFW長谷川祥之からパスを受けたレオナルドは、飛び込んできたフリューゲルスのDF高田昌明のスライディングを左足アウトサイドでボールを浮かせ、ひらりとかわした。

 数人のディフェンダーに囲まれる中、レオナルドは個人技で打開を図る。ゴールを背にし、体を時計回りに回転させながら、左足1本で、なんと5回のリフティング。前のスペースが空くのを見計らって、左足でゴールに叩き込んだ。この間、わずか5秒。GKの楢崎正剛は、全くなす術がなかった。

 このスーパーゴールは、2013年のJリーグ20周年企画で、過去20年のベストゴール第1位に選出された。

 また23年の30周年企画では、6つの部門に分かれたベストゴール「テクニカル部門」で1位に選ばれた。

 実はレオナルド、サンパウロ時代にも、似たようなことをやったことがあるという。

「でも、あの時は(リフティングが)3回だった」

 ゴール前で、行く手を阻まれた時に用いる最後の手段がボールを宙に浮かせてのリフティング突破だったのだ。

 さてこのプレーについて、本人は25年1月24日に配信(ユーチューブのリクシルスポーツチャンネル)されたジーコとの対談で、こう語っている。

「自分が決めたゴールの中で、最も美しく最高のものだと思っている。

 DFがスライディングで寄せてきたのが見えた。本能的にボールを浮かせて、1、2、3回とリフティングして、フリーになるタイミングを見つけてシュートしたんだ」

 このプレーを、ジーコはスタンドから観ていた。

「瞬時に厳しいマークから抜け出す想像力が必要で、卓越したボールコントロールも完璧だった」

 神様がお墨付きを与えた「神業」だった。

二宮清純(にのみや・せいじゅん)1960年、愛媛県生まれ。フリーのスポーツジャーナリストとしてオリンピック、サッカーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。最新刊に「森保一の決める技法」。

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