機関紙「しんぶん赤旗」の発行が危機的状況にあるとして、共産党が10億円の寄付を募っている。田村智子委員長は4月24日の記者会見で、現時点で約5億円が集まったと説明しているが、寄付を募り始めてから3カ月が経過しても、目標の半分にしか達していない。仮に10億円集まったとしても付け焼き刃にすぎないことは、昨年秋の衆院選の結果が示している。
「赤旗」が脚光を浴びたのは昨年秋の衆院選で、派閥パーティーの裏金問題で自民党の公認を得られなかった候補者が代表を務める支部に対し、公認候補と同額の2000万円が党本部から振り込まれたとスクープしたからだ。この報道により自民党は大打撃を受けたと、党幹部は口々に振り返る。
それでも共産党には追い風とはならなかった。公示前の10議席から8議席に後退しただけでなく、れいわ新選組の9議席を下回った。いくら「赤旗」が存在感を示したとしても、比例代表の得票数も減らしたのだ。大手新聞の特ダネが部数増につながらないのと同じである。
政党交付金を受け取らない共産党にとって、「赤旗」の購読料を中心とする事業収入はおよそ8割を占めており、収入源の柱となっている。2024年1月の党大会では、85万人に減った購読者を2年間で100万人に回復させる目標を立てたものの、絵に描いた餅。やむをえず、1月の中央委員会総会で10億円の寄付呼びかけを始めた。
だが、高齢化する党員、閉鎖的な党運営という共産党の構造的な問題にメスを入れない限り、れいわ新選組の後塵を拝し、衰退を止めることはできないだろう。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)