クレバーなプレーでゴールに立ちはだかり、サッカー日本代表として122試合に出場して「アジアの壁」と呼ばれた井原正巳氏が、これまで対戦した中で最もイヤだった選手は誰なのか。
前園真聖氏のYouTubeチャンネルで「べストイレブン」を発表した井原氏は、ツートップに中山雅史とパトリック・エムボマを挙げた。その上で、パトリック・エムボマが最もイヤだったと振り返ったのである。
「どうにも抑えられなかった。体が強いし速いし、シュートも上手い。ヘディングも強い。俺の身体(能力)じゃ、どうにもならない。当たってもビクともしない」
エムボマの能力は規格外であり、何もすることができなかったというのだ。
「対戦するのがイヤだった。すごいゴールを決められたこともあるし。駆け引きするとしたら、ボールをもらう前にオフサイドラインにうまく誘い込むとか。体をぶつけて走らせないとか。そういうことで駆け引きするしかない。ゴール前にボールが上がったらダメ」
あまりのすごさに、とてつもない絶望感を味わったそうで、
「自分の能力のなさを感じた相手。あそこまで強くない相手ならなんとか太刀打ちできるけど、(エムボマは)規格外。リフティングでかわされて、ボレーですごいシュートを打ってくる。どうにもできないな、と思った。オムちゃん任せる、みたいな(笑)」
なんと、同じセンターバックの小村徳男に任せていたというから、その苦手ぶりは尋常ではない。
Jリーグが始まった当時は多くの外国人選手がプレーしていたが、やはりエムボマはダントツだった。
「ストイコビッチなんかは上手いし、三拍子揃っているんだけど、ゴールから遠ざけたり、怒らせたりできる。(エムボマは)どうにもできない。ゴール前に来たら、体をぶつけても無理。チームとして守るしかない相手。本当にイヤでしたね」
これでもかと力説するエムボマのスゴさに、前園氏も激しく同意。どれだけすごい選手だったのか、改めて明らかになったのである。
(鈴木誠)