消費税減税、高額療養費、コメ不足の対策などをめぐり、石破茂首相に対する自民党支持層の不満が高まる状況下、党内の「反石破」に向けた動きが鈍いことも、怒りを増長させる一因となっている。
そうした中で、日本の外交力強化に向けた戦略本部が、5月14日に初会合を開く。表向きは党政務調査会の下に設置されるが、麻生太郎最高顧問を本部長に、本部長代理に高市早苗前経済安全保障担当相、幹事長に小林鷹之元経済安保相ら、昨年9月の総裁選で石破首相(総裁)と対立した陣営の面々が名前を連ねている。これは「ポスト石破」を意識したものといえる。
もともとは高市氏が政調会長時代に、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)戦略本部を立ち上げたいとして、麻生氏に本部長就任を依頼していた。新しい組織ではなく、長らく開催していなかったのでこのタイミングで再開することにした、という説明だ。
しかし参加者の面々を見るにつけ、党内には「憶測」が広がっている。顧問には茂木敏充前幹事長、副本部長には西村康稔元経済産業相や萩生田光一元政調会長を充てることにしているからだ。いずれも石破首相とは距離を置く面々である。
FOIPは安倍晋三元首相が提唱。安倍氏とは政敵だった石破首相は表向き、この構想を推し進めるとしているが、もともとは「アジア版NATO(北大西洋条約機構)」の創設が持論であり、それほど積極的ではないとされる。
そこで今回、戦略本部を動かすことで、安倍路線の継承を名目に保守系を再結集しようとしている。その方が参加者を募りやすいからだ。
もっとも、高市支持グループの結集かというと、そうではない。小林氏もなお総裁選出馬に意欲を示しており、高市氏との一本化は図れていないからだ。党内には高市氏を敬遠する向きも多い。この戦略本部での高市氏の立ち振る舞いは、「ポスト石破」の動きに影響を与えることになりそうである。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)