地下深くで何かがうごめく気配を感じさせる「異様な沈黙」が今、日本列島を覆っている。この長く続く静寂はいったい、何を意味するのだろうか。
日本国内では4月26日に熊本県熊本地方で発生したM4.2(最大震度3)の地震以降、5月10日までの丸2週間、震度3以上の揺れが一度も観測されていない。これほど長期間にわたって強い地震が起きないのは、2021年1月2日から22日の21日間以来、実に4年ぶりの現象だ 。
世界を見渡しても、同様の静けさが続いている。南米沖でM6クラスの地震は観測されたものの、陸地直下で震度3以上に相当する揺れは報告されておらず、地震活動は一時的に落ち着いているように見える。
地震大国といわれる日本で、これほど長い間、揺れがないのは歓迎すべきことなのかもしれないが、一方で「嵐の前の静けさじゃないか」「逆にめちゃくちゃ不気味」という声が聞こえてくる。とりわけ震度3以上が来ない2週間という具体的な数字が、人々の不安をさらに煽っているようだ。
地震学では、大地震前に周辺で発生していた小規模な微小地震(M3以下)が急激に減少する現象を「地震休止期」という。過去には1952年の十勝沖地震(M8.2)や1964年の新潟地震(M7.5)の発生時に、数カ月前から震源域で観測されるM1以下の地震が著しく減少した記録がある。
また、東日本大震災の時には48時間前から全国各地の地震がピタリと収まっており、オカルト好きの間では「大地震48時間の法則」と呼ばれている。これらの例はいわば、地殻内部が静まり返った状態が本震の「嵐」を引き寄せたといえるかもしれない。
今回の「静寂」が大地震の予兆とは断定できないが、30年以内に南海トラフ大地震が発生する確率が「80%」といわれる中、備えを固める絶好の機会になりはしないか。非常用持ち出し袋や食料と水の備蓄、家族や隣人との連絡方法や避難経路の再確認をしておきたい。
地震はいきなり発生し、予告はない。静かな日々の裏側には「次の一撃」が潜んでいるかもしれないのだ。
(ケン高田)