習近平国家主席率いる中国が日本産水産物の輸入停止に踏み切ったのは、2023年8月である。
政府が近く閣議決定する2024年度の水産白書によれば、福島第一原発処理水の海洋放出をめぐる、中国側の科学的根拠なき言いがかりによって、2024年における日本産水産物の輸出額は、放出前の2022年に比べて6.8%減の3609億円へと縮小。主力商品のホタテに至っては、輸出額の5割強を占めていた中国向け輸出がゼロにまで落ち込んでしまった。
ところが、である。実はこの間、日本の水産業者は輸出ルートの「脱中国化」を強力に推進。ホタテについては「輸出先の中国で殻むき加工⇒最終消費地のアメリカに再輸出」という従来のルートを抜本的に見直した。そして「ベトナムやタイで殻むき加工⇒最終消費地のアメリカへ再輸出」という新規ルートの構築を、着実に進めてきたのだ。
その結果、2022年に1%前後だったベトナム向け、タイ向けのホタテ輸出は、2024年には15.3%、6.0%へとそれぞれ急増。ホタテの一大産地として知られる、北海道に拠点を置くメディアの報道記者が明かす。
「道内のホタテ業者はベトナムやタイなどの東南アジアルートに加え、道内をはじめとする国内での加工体制の整備にも取り組み、日本からアメリカへの直接輸出ルートを開拓してきました。この脱中国シフトによって、アメリカへのホタテの直接輸出は、2022年の8.6%から、2024年には27.5%へと急増しています」
そんな中、ホタテを扱う水産業者の一部からは、イチャモン習近平に対する「完全勝利宣言」まで飛び出しているというのだ。報道記者が続ける。
「一連の脱中国化に焦りを感じたのか、中国側は最近、ホタテをはじめとする日本産水産物の輸入再開を口にし始めていますが、『時すでに遅し』でしょう。取材に応じたあるホタテ業者は語気を強めて『今さら欲しがっても誰が売るか!』と答えていました」
まさに自業自得の顛末というほかはない。
(石森巌)