どうやらアスコリピチェーノ(牝4)とステレンボッシュ(牝4)の「2強ムード」が濃厚な、牝馬限定GⅠ・ヴィクトリアマイル(5月18日、東京・芝1600メートル)だが、両馬には気がかりな「死角」が見え隠れしている。
アスコリピチェーノは昨年のGⅠ・桜花賞(阪神・芝1600メートル)2着の後、牡馬を相手にGⅠ・NHKマイルC(東京・芝1600メートル)に殴り込みをかけ、ジャンタルマンタル(牡3、当時)の2着と健闘した。
今回のヴィクトリアMは陣営がその時から狙っていた目標レースだが、前々走⇒前走の海外遠征(豪州⇒サウジ)がいただけない。問題は着順云々(12着⇒1着)ではなく、距離選択(芝1500メートル⇒芝1351メートル)だ。適鞍がなかったのかもしれないが、マイルGⅠに臨むステップとしては、やはりイレギュラーな感が否めない。
一方、ステレンボッシュは昨年の桜花賞でアスコリピチェーノをねじ伏せた後、中距離GⅠ戦線を渡り歩いたが、いずれも一歩届かず。今回はGⅠ勝ちのあるマイル戦線への路線変更であり、その意味で陣営の勝負度合いは高いと言っていい。
ところが、だ。前走のGⅠ・大阪杯(阪神・芝2000メートル)は、後方に構えた同馬には絶好のハイペースとなったにもかかわらず、最後の直線では全く伸びずに13着と大敗。敗因が調子落ちにあったとすれば、牝馬だけに、ココでの一変は期待しにくい。
そこで2強の死角を衝く激アツ馬として浮上してくるのが、ボンドガール(牝4)である。
ボンドガールは中距離戦線でも良績を残しているが、体型から見ても本質は「生粋のマイラー」である。同馬を管理する手塚貴久調教師が「ココ(ヴィクトリアM)は最も狙っていたレース」と明かすように、今年の年明けからマイル重賞を2戦し、絵に描いたような叩き3走目で臨む今回は、まさに「勝負がかり」の一戦だ。
課題となっていた「かかり癖」についても、今回は初めて「テンに行かせない調教」「あえて遅らせる調教」を敢行し、「しまい」はいつになく余力十分な脚色を見せていた。鞍上の名手・武豊が最後方で折り合いをつけ、直線の入り口までじっくりと脚をためることができれば、爆発的な鬼脚で2強を抜き去るシーンがあっても驚けない。
(日高次郎/競馬アナリスト)