GⅠ戦が続く中、今週は牝馬クラシック第2弾、オークスが行われる。桜花賞から距離が一気に800メートル延びる女王決定戦だけに、二冠を制すれば、大いに価値が上がるというものだ。
馬単が導入された03年以降で桜花賞、オークスの二冠に輝いたのは03年スティルインラブ、09年ブエナビスタ、10年アパパネ、12年ジェンティルドンナ、18年アーモンドアイ、20年デアリングタクト、22年スターズオンアース、23年リバティアイランド。いずれも歴史に名を刻む名牝と言ってよく、今年はエンブロイダリーがその候補である。
桜花賞と同様、毎年のように名勝負が繰り広げられているが、今年も層が厚く、かなりハイレベルの争いになるとみられている。
牡馬と若干違うところは、距離に多少不安があるとみられていても、力でその壁を乗り越えてしまう女傑がまま現れることだ。
今年は、どうだろう。桜花賞馬エンブロイダリーは、それだけ抜けた存在なのか。各馬の力量が高いだけに、そのあたりの値踏みは難しく、どう転ぶか予断を許さない。
まずはデータを見てみよう。03年以降の過去22年間、馬単による万馬券は7回(馬連6回)。この間、1番人気馬は9勝(2着4回)。2番人気馬は3勝(2着6回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は6回。順当に堅く収まる年も少なくないが、荒れる際は極端なだけに、つかみづらいGⅠ戦と言っていい。
もろもろ考慮して、最も期待を寄せてみたいのは、リンクスティップだ。
前走の桜花賞は3着。勝ったエンブロイダリーとはコンマ4秒差だったが、道中、最後方からの追走では厳しかったと言わざるをえない。とはいえ、しまいの脚は目立っていただけに、惜しまれる結果だった。
前々走のきさらぎ賞は、牡馬を相手に2着と頑張った。未勝利を勝ち上がったばかりでの重賞挑戦だったことを思うと、力は確かと言っていいだろう。
前走後は疲れもなく、いたって順調。ここを目標にしっかりと調整を積み、実にいい雰囲気にある。中間の稽古内容もよく、1週前の追い切りも軽快でリズミカル。文句なしだった。
「桜花賞は、それまでの競馬とは違って後ろから。馬は戸惑ったようだったが、しまいは鋭く追い詰めてくれた。悪い内容ではなかったし、距離が延びるオークスは楽しみになった」
西村調教師はそう振り返るとともに、期待のほどを口にする。
菊花賞、天皇賞・春を勝った父キタサンブラックはもちろん、母の父キトゥンズジョイも芝2400メートルのGⅠターフクラシック招待Sの勝ち馬。ケンタッキーダービー勝ちのキャノネイド、サンデーサイレンスの父ヘイロー、仏2000ギニー勝ちのレミグランなどを出した名牝コスマーの血を引く良血で、血統配合から道悪になっても問題はない。まさに格好の舞台となるここは、晴雨にかかわらず大きく狙ってみたい。
逆転候補は、サヴォンリンナ。桜花賞と同じ日に行われた忘れな草賞の勝ち馬で、安定したレース内容はなかなか。目下連勝中で、この中間の稽古内容は実によく、傍から見ても状態がさらに良化していることは明らかである。この馬も距離が延びてよく、脚質が自在なところもいい。
穴中の穴は、タガノアビーだ。前々走のフローラSは5着。最内枠が逆に響いたようで、道中、ほぼ最後方に下げたのがいけなかった。それでもメンバー中2番目の上がり脚は目立っており、キャリアを考えると上がり目十分。“一発”があっていい。