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記事全文を読む→サッカー「日本VS北朝鮮」国立競技場を埋め尽くす北朝鮮応援団がゴールの瞬間にとった「戦慄の行動」
サッカーの取材で一度だけ、とてつもない恐怖を感じたことがある。それは1985年3月21日に東京・国立競技場で行われたメキシコW杯1次予選の、日本×北朝鮮の試合で見た光景だった。
この時の日本代表はMF木村和司を中心にした、日本代表史上最強チームと言われた。とはいえ、当時はまだサッカー冬の時代。国立競技場で行われる日本代表の試合でも、観客が1万人以下ということは珍しくなかった。
北朝鮮戦は、試合前まで雨が降っていた。加えて気温が低かったため、ガラガラのスタンドを予想していた。
ところが、だ。メインスタンド、バックスタンドがほぼ観客で埋め尽くされているのを見て驚いた。一見して3万人以上は入っていたことが分かった。予想外の光景だったが、直後にさらに驚愕することになった。
スタンドのほとんどを占めるのは、北朝鮮の国旗を持った応援団。数百人の日本代表サポーターの一団は、ゴール裏の片隅に追いやられていた。北朝鮮側が在日の朝鮮学校に動員をかけていたのだ。
当時の東アジアは実力的に韓国がトップで、北朝鮮はこれに続く強国。日本にとっては、完全に格上の相手だった。ただでさえ勝つのが難しい相手にこの状況では…と落胆した。
試合が始まると「イギョラ(勝て)! イギョラ!」の大声援が起こり、この声に押されて、試合はフィジカルに勝る北朝鮮が押しまくった。完全にアウェーだった。
しかし、奇跡が起きる。現在では考えられないが、当時の国立競技場のピッチはボコボコでところどころ芝がはげ、雨が降ると水たまりができるほどひどかった。それが奏功したのだ。
前半20分、日本の最終ラインからゴール前にロングボールが放り込まれた。相手DFはこれを止めようと走り込んだが、水たまりに入ってボールが止まるという予想外の事態に対応できずに、ズッコケた。そこにFW原博実が飛び込み、先制ゴールを決めたのだ。
予想外のゴールに、メインスタンドの上にいた数人の日本人サポーターが「よっしゃー!」と歓喜の雄叫びを上げる。その直後だった。メインスタンドの北朝鮮応援団の数百人が一斉に振り返り、後ろにいた日本人サポーターを睨みつけたのである。この光景に、筆者は戦慄を覚えた。なんともいえない恐怖を感じた。
試合は日本がゴールを死守し、見事に勝利したが、睨みつけられた数人のサポーターは危険を感じたのか、試合終了と同時にスタジアムをあとにしていた。当時、新人だった筆者も、実は同じような気持ちだったのである。
これから7カ月後、10月26日に行われた、初のW杯出場をかけた韓国戦では、北朝鮮戦の反省から日本サッカー協会が動員をかけ、国立競技場は日本サポーターでほぼ満員となった。木村が伝説的なFKを決め、スタジアムを盛り上げたが、1-2で敗れた。内容的には完敗だった。
アウェーの国立競技場では奇跡を起こしたものの、完全なホームの状況でも、韓国の壁は厚かったのである。
(升田幸一)
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