社会
Posted on 2025年09月21日 10:00

ホントーク〈今道琢也×名越健郎〉(1)フジテレビ問題がテレビ離れに拍車

2025年09月21日 10:00

テレビが終わる日
今道琢也/968円・新潮新書

 フジテレビを巡る問題に端を発し、業界全体で凋落の一途をたどる、かつての「メディアの覇者」に未来はあるのか?元NHKアナウンサーの今道琢也氏がさまざまなデータを駆使して、テレビ業界の“実態”を暴露する。

名越 私はかつて時事通信社で記者をしていて、最近のメディア業界の混乱や地盤沈下には忸怩たる思いです。まず、フジテレビの第三者委員会が認定した元タレントの“性暴力”を巡る一連の問題について、どうお考えですか。

今道 フジテレビが今後、改革をどのように進めていくのかわかりませんが、テレビ業界が復権していくことは難しいだろうと思います。

名越 視聴者のテレビ離れに拍車をかけるということでしょうか。

今道 そうです。かつて、テレビはメディア界の頂点に君臨していました。ところが今回、この本を書くためにデータを調べたり、多くの人に話を聞く中で、テレビが見られていない実態が明らかになりました。

名越 確かに、私が教えている学生たちもあまり見ていません。テレビ自体を持っていない学生も少なくないですね。

今道 最近のテレビには、昔のような絶対的な地位はありません。そこに早く気づけなかったことが、テレビ局を巡る不祥事が連続したことの背景にあります。

名越 現在は他のエンタメが増えたことで、テレビの魅力が薄れたんでしょうか。

今道 昭和50年生まれの私の子供時代も、ファミコンなど娯楽は多かったんですけど、それでもテレビはよく見ていました。昔と根本的に異なるのはスマホの存在です。今は、ユーチューブやティックトックなどにアップロードされた動画をスマホで楽しむ人が増えたんです。

名越 SNSに上げられる動画は無数にあるわけですから、とてもテレビを見る暇はないですね。

今道 10代の約2割、20代の約3割は「ネット視聴も含め1週間に1度もテレビ番組を見ない」というデータもあります。地上波は東京や大阪でもテレビのチャンネルは6つしかありませんが、ユーチューブでは数え切れないほどの動画が外国語も含めて存在します。要するに視聴者の選択肢がものすごく増えたんです。

名越 こうした状況に、テレビは埋没してしまったということでしょうか。

今道 はい。アイドルが好きな人も、旅行が好きな人も満足できる動画がユーチューブなどでは必ず見つかりますから。

名越 テレビも価値観の多様性に対応しているはずですけど、そのあたりはどうですか。

今道 テレビは、何千万人の視聴者に向けて制作する最大公約数的なメディアです。そこが個人の興味に深く入りこんだSNSの動画に比べると魅力を感じられない大きな理由でしょう。

ゲスト:今道琢也(いまみち・たくや)1975年大分県生まれ。99年、京都大学文学部(国語学国文専修)卒、NHK入局。15年間アナウンサーとして勤務ののち14年に独立し、インターネット上の文章指導専門塾「ウェブ小論文塾」を開講する。「文章が苦手でも『受かる小論文』の書き方を教えてください。」「人生で大損しない文章術」など著書多数。

聞き手:名越健郎(なごし・けんろう)拓殖大学特任教授。1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社。モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長などを経て退職。拓殖大学海外事情研究所教授を経て現職。ロシアに精通し、ロシア政治ウオッチャーとして活躍する。著書に「秘密資金の戦後政党史」(新潮選書)など。

全文を読む
カテゴリー:
タグ:
関連記事
SPECIAL
  • アサ芸チョイス

  • アサ芸チョイス
    社会
    2025年03月23日 05:55

    胃の調子が悪い─。食べすぎや飲みすぎ、ストレス、ウイルス感染など様々な原因が考えられるが、季節も大きく関係している。春は、朝から昼、昼から夜と1日の中の寒暖差が大きく変動するため胃腸の働きをコントロールしている自律神経のバランスが乱れやすく...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月18日 05:55

    気候の変化が激しいこの時期は、「めまい」を発症しやすくなる。寒暖差だけでなく新年度で環境が変わったことにより、ストレスが増して、自律神経のバランスが乱れ、血管が収縮し、脳の血流が悪くなり、めまいを生じてしまうのだ。めまいは「目の前の景色がぐ...

    記事全文を読む→
    社会
    2025年05月25日 05:55

    急激な気温上昇で体がだるい、何となく気持ちが落ち込む─。もしかしたら「夏ウツ」かもしれない。ウツは季節を問わず1年を通して発症する。冬や春に発症する場合、過眠や過食を伴うことが多いが、夏ウツは不眠や食欲減退が現れることが特徴だ。加えて、不安...

    記事全文を読む→
    注目キーワード
    最新号 / アサヒ芸能関連リンク
    アサヒ芸能カバー画像
    週刊アサヒ芸能
    2025/9/16発売
    ■620円(税込)
    アーカイブ
    アサ芸プラス twitterへリンク