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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈トクリュウ捜査で身内にスパイ。取り込まれた組対の共感性とは〉
警視庁の根幹を揺るがす不祥事が起きた。「匿名・流動型犯罪グループ」、通称「トクリュウ」である、国内最大級のスカウトグループ「ナチュラル」を5年以上捜査する中、身内に「スパイ」が発覚した件だ。
今年1月、逮捕に向けてコウカク(行動確認)をしていたところ、メンバーの1人が行方をくらます。捜査員の間で「捜査情報が漏れている」と疑惑が広がる。監察部門の内部調査によって警視庁暴力団対策課の警部補、神保大輔容疑者が浮上。11月に地方公務員法違反容疑で逮捕された。
自宅から押収した現金は900万円。贈収賄での立件を目指したが、現金の直接授受のため、金の流れが解明できない。貴重な情報を流すたびに得ていた報酬とは別で、ナチュラルに従属する「契約金」だったと俺は読むが‥‥。
神保容疑者は、20年12月に暴力団対策課(組対4課)に着任し、23年から今春までナチュラルの捜査を担当。ミイラ取りがミイラになった最悪の事態だが、組対捜査に必要な「共感性」も起因していた。殺人事件を担当する捜査一課は、殺人が対象なので犯人を取り込む必要はない。が、組対は犯罪組織の情報を取るのが仕事。捜査対象との距離が近く、言葉遣いも友達感覚で接している。取り調べの様子を見たら、
「面倒を見てやるから、出所したら連絡してこい」
と話し、違和感を覚えたものだ。神保容疑者はメンバーの取り調べをしていた。録画なしの1対1で行うこともあり、そこで取り込まれ寝返ったのだろう。一課でも、組対の「軽口」は煙たがられていた。捜査が一緒の時は、情報が外に筒抜けになるからで、最大限の警戒を払うように、上司に釘を刺されたものだ。
10月に警視庁は組織改編を実施し、組織犯罪対策部を刑事部と統合。部内に「特別捜査課」を新設している。表向きはトクリュウ対策の強化だが、神保容疑者がスパイだと判明する以前にも、内部で情報漏れが疑われていた。組織内部の深刻な汚染により、組対を潰す他なかったのだ。
ただ、今回の大きな問題は、神保容疑者が捜査を外れた後にもスパイをしていたこと。関係先に設置した捜査用カメラの画像を、ナチュラルが開発した専用アプリを使用し、私用のスマホから提供している。捜査チームは部外者へのアクセスを遮断していなかったのか。それとも、神保容疑者の「上流」には、侵食された別の協力者がいるのか。
警視庁はこれ以上の信頼失墜を恐れ、公表することなく蓋をするはず。
ナチュラルは資本力を使い警察内に「神経」(内通者の意)網を構築。情報収集能力を実装した。浸透された捜査チームは総入れ替えし、捜査手法の変更や内偵の洗い直しを余儀なくされた。トクリュウを壊滅する以前に、警視庁が崩壊寸前の末期症状に陥っていたとは、笑えない話だ。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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