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死んでも「アイツ」に勝ちたかった③ 西本聖 「エース」の座を争った江川卓との9年間(2)

交互に務め上げた開幕投手

 江川と西本の2人が80年代の巨人を牽引してきたのは、ファンも認めるところである。開幕投手の座も80、82、84、86年は江川、81、83、85、87年は西本と交互に務めてきた。しかし、それは「お互いに譲り合って」という、なまぬるい関係ではなかった。

 79年秋の伊東キャンプだった。長嶋茂雄監督は若手戦力の底上げをするため、「地獄の猛練習」を敢行し、2人は並んでブルペン投球をすることになった。1時間が経過。100球はとうに超えていた。西本はチラ、チラと江川に目をやる。

「まだやるのか‥‥。俺より先にやめる気がないんだな。だったら‥‥」

 その思いは2人とも同じだったようだ。

 また1時間が経過した。すでに、ともに息が乱れてきている。

「まだやめないのか…」

 ついに300球を超えた時だった。ブルペン捕手が怒って立ち上がった。

「いいかげんにしてくれ! 2人とも壊れてしまう」

 ブルペン捕手の提案で互いに1球ずつを投げて、2人の意地の張り合いは強制終了させられた。

 僕は「エースは1人しかいない」と、ずっと思ってました。右のエース、左のエースなんてのもないと思ってました。エースとは、基本的に周りが評価をするものだと思うんです。そのためにも、シーズンの勝ち星で江川さんに勝ちたいと思っていました。

 それは結局、かないませんでしたが、「開幕投手」というのも、その1年間、チームの中心として回していく、ナンバーワンの証しだと思っていた。だから、江川さんを抑えて4度の開幕投手に選ばれたのは、素直にうれしかったです。

 初めて開幕投手を任されたのは81年。「江川さんじゃなくて、俺なんだ。やっと一歩前に出られたかな」という思いで、世間も認めてくれたかなと。そのあたりから、江川さんも僕のことを意識してくれたんじゃないかな。

 お互いに対戦チームに関する情報交換をすることは、まったくありませんでした。それがプロじゃないですか。スコアラーの情報をもとにしたチーム全体のミーティングには一緒に参加しましたが、個人的にやっていることを僕は教えないし、自分から教えてその結果、自分の価値がなくなるんだったら、意味がないし、そういうところはお互いに個人事業主ですから、僕も聞きたいとは思わなかった。

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