社会

池上彰 そうだったのか「10年後ニッポン」(後)(3)

自分の臓器は自分で賄う

──10年後の私たちの暮らしはどうなりますか?

 例えば、医療分野で今、世界が注目しているものにiPS細胞というのがあります。これによって医療が大きく進展するというのは間違いないでしょうね。

──それはどういったものでしょう?

 はい、京都大学の山中伸弥教授などが進めている研究で、人体のさまざまな器官の細胞に変化する“万能細胞”のことです。簡単に言えば、私たちの体の一部がなくなった時に自分の細胞を使って取り替えることができるわけです。しかも、数年前にはiPS細胞がガン細胞になる危険を指摘されていましたが、ここ1年ほどで安全性が確保されました。今まさに再生医療は劇的に進歩しています。

──日本はますます長寿大国になりそうですね。

 まぁそうですね、他人からの移植ではなく、自分のiPS細胞で自分の臓器を作れる可能性が高くなっているわけですから、これがビジネスとして軌道に乗れば、日本の医療の将来は相当明るいですよ。

 反対に、食料危機の問題は当然出てくるでしょう。トウモロコシや小麦など、農作物である穀物そのものを人が食べているかぎり、今の地球の人口で食料不足にはなりにくいんですよ。ところが豊かになった国々がトウモロコシをそのまま食べずに鶏や牛に食わせておいしい肉を食べるようになると食料不足になるんです。「これから中国人が肉を食べるようになったら大変だよね」と言われていましたが、今まさに中国がそういう状態で食料がとても足りない。で、今度は世界中で魚を獲るようになった。

──おかげでマグロも年々高値となり、庶民には高根の花になりそうです。

 そう、お次はウナギもじゃないですか。アメリカがワシントン条約の絶滅危惧種にウナギを入れるべきではないかと問題提起したんですよ。今後はウナギだって食べられなくなるかもしれません。このように食料危機のリスクはどんどん高くなっていきます。その中で、魚の養殖技術、あるいは穀物の増産をどう進めていくかということが課題です。アジア、アフリカにはまだまだ未開の農地や農業技術が十分でない地域があります。日本の技術力で、地産地消することができれば、食料の買い占めは起こらないわけですよ。日本にはそれだけの力があると私は信じています。

カテゴリー: 社会   タグ:   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
あの「号泣県議」野々村竜太郎が「仰天新ビジネス」開始!「30日間5万円コース」の中身
2
3Aで好投してもメジャー昇格が難しい…藤浪晋太郎に立ちはだかるマイナーリーグの「不文律」
3
「コーチに無断でフォーム改造⇒大失敗」2軍のドン底に沈んだ阪神・湯浅京己のボコボコ地獄
4
フジテレビ・井上清華アナ「治らない顎関節症」と「致死量ストレス」の不穏な関係
5
【大騒動】楽天・田中将大が投げられない!術後「容体不良説」も出た「斎藤佑樹との立場逆転」