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記事全文を読む→ビートたけしの名言集「映画のキャスティングで『出ろ出ろ』詐欺」
7年程前、吉本の芸人さんに会うと、よく聞かれた話題がありました。
「たけしさんが次の映画に、FUJIWARAさんの二人を使いたがってるって聞いたんですけど、本当ですか?」
と。この噂は本当で、一時期、殿が、
「あのほら、吉本のフジモンだっけ? あいつがいるコンビ? あの二人なんか次の映画にいいかなと思ってよ」
そう漏らしていたことがあったのです。その頃の殿は、いくつか候補がある“次期北野映画”を、頭の中で諸々と準備していた時期であり、そんな候補の中の1本に、FUJIWARAさんのお二人がかなりいい役で出演される構想の映画が確実にあったのです。
こういった殿の「次の映画によ、○○使おうかなと思って‥‥」といった、“思いついたらすぐ口にしてしまう”キャスティング構想は、最近はなくなりましたが、昔は本当によく耳にしました。で、そのキャスティングのほとんどが、なかなか実現しないのです。
次から次へとアイデアがあふれ出す、天才・北野武監督。そのアイデアの洪水に押され、当初描いていた内容とは、大きく変わることがよくあります。当然、当初あったはずの役がさっぱりなくなるといったケースも出てくるわけです。
が、殿に、「次の映画、出てもらおうかなと思って」などと言われた側からしたら、これはたまったもんじゃございません。人間、舞い上がった分だけ落胆もでかいというもの。
ですから、何度かこのパターンを近くで目にしている我々たけし軍団の面々は、少しばかり皮肉を込めて、これを、「殿の“出ろ出ろ詐欺”」と、呼んでいます。
しかしながら、誤解しないでほしいのは、殿もキャスティングを口にされた時点では、まったくもって真剣であり、けして後で役がなくなるなどと、みじんも思っていないのです。にしても、しつこいようですが、言われた側の気持ちを察すると、やはり、たまったもんじゃございません。
で、この手のやりとりで一番すごかったのは、ある一般の会社員の方と殿が仲良くなり、何度か食事をするうちに、
「次の映画なんだけど、ちょっと○○さんに頼みたい役があるんだよね」
と、例によってキャスティング案をさらっと言い放ったのです。当たり前ですが、相手は素人です。とんでもなく喜んでおりました。
が、やはりやはり、その話はしっかりと立ち消えと相成りました。今でもふと、あの方の落胆を思うと、わたくし、夜も眠れません。
最後に、先に挙げたFUJIWARAさんの件。
実は“結構いいところ”まで行ったのですが、フジモンさんがタレントのユッキーナさんとご結婚をされたと聞いた殿は、
「なんだ、結婚しちまったのか。あいつの不幸そうな感じがよかったのにな。だったらいいや!」
と、何とも屈折した理由で、この話をはっきりと終了させたのでした。
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◆プロフィール アル北郷(ある・きたごう) 95年、ビートたけしに弟子入り。08年、「アキレスと亀」にて「東スポ映画大賞新人賞」受賞。現在、TBS系「新・情報7daysニュースキャスター」ブレーンなど多方面で活躍中。本連載の単行本「たけし金言集~あるいは資料として現代北野武秘語録」も絶賛発売中!
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