政治
Posted on 2011年10月12日 11:57

森永卓郎の早わかり解説 橋下ハン、「大阪都」って庶民は儲かるんでっか!?(2)「大阪都」ではなく「橋下王国」

2011年10月12日 11:57

 まずは、役所のコスト削減から見てみよう。
「府市統合は日本の歴史上にない行政のムダ削減につながる」というのが橋下知事の主張だが、前出・牛山教授は真っ向から反論する。「市町村合併では役所の職員や議員の数は減りますが、今の大阪市を8~9の区に分ければ、例えば今まで大阪市では1人だった高齢者福祉課長が、その数だけ増えることになるわけですから、むしろコストは拡大する可能性が高い」
 1つに統合すると職員の数が逆に増えるという不思議な現象が起こるという。そればかりか、
「それら全てが大阪都知事の配下となり、ある意味、石原都知事のような五輪の開催地に立候補するなど、ド派手な権限を手に入れることになる」(前出・森永氏)
 カジノ誘致に関して、橋下知事はこれまでにも「大阪をもっと猥雑にするためにも、カジノをベイエリアに持ってくる」など、前のめりな発言で積極的誘致を示唆し、実際にマカオ、シンガポールなど海外のカジノ視察も重ねている。
「仮に『大阪都』ができても税収が増えるという根拠はありません、そこで“賭博税”で税収が増やせるカジノ構想を持ってきたわけです」(前出・吉富氏)
 では、そのカジノ構想は現実味のある話なのか。吉富氏は、
「カジノは法律の改正が必要なので実現のハードルは高い。それに、大阪に誘致するための大規模な土地もありません。また、リニアについても確かにJRの計画はあるが、それも30~40年後の話です。はたしてそれまでに関空が地盤沈下に耐えられるかどうか」
 と、カジノ誘致どころか、橋下知事が「関空と梅田を8分で結ぶ」とする“関空リニア計画”にまで疑問を投げかける。これに同調するのが前出の森永氏だ。
「カジノに関しては石原都知事も積極的だったけど、なかなか実現にたどりつかなかっただけに難しい気がします。関空リニアにしても超高速だけに、曲がった路線は敷けない。海の上でも走らせるのか、少なくとも梅田中心部にはまっすぐの土地は空いていません」
 と、完全否定するのだ。さらにこう続ける。
「周りと調整して物事を進める平松さんに対し、橋下さんは独裁者タイプ。発展途上国では独裁者によって景気が上向くことはよくあることなんです。例えば、権利関係がゴチャゴチャの大阪の地下鉄の再編に関しては、むしろ『大阪都』のほうが向いているかもしれません。だからといって、大阪が独裁でいい、という問題ではありませんが」
 今年4月の統一地方選、「大阪維新の会」の春の陣直前には雑誌のインタビューで「政治的に必要なのは民主的独裁」と語っていたのは、当の橋下知事だった。「そもそも橋下さんに大阪都で儲かるかどうかという発想は、まったくないと思いますよ。橋下さんは大阪を自分の考える姿に変えるために、3億円もの年収を放棄して出馬した。ところが、いざ大阪府知事になってみると、政令指定都市の大阪市が物凄い権限を持っていて、自由にならない。それが『大阪都構想』の原点なんだと思います。だから『大阪都』と言うとわかりにくい。『橋下王国』を作るんだと言ったほうが正確なんではないかと思う。橋下独裁体制を築くための道具が『大阪都』なんだと思います」(前出・森永氏)
 そもそも、府が都に化けるという大技は実現できるのだろうか。
 前出・牛山教授が説明する。
「国民的なコンセンサスを得て、地方自治法を改正することが必要です。その場合、全国19の政令指定都市の動向も影響してきます。横浜市、川崎市などは県から独立する特別市を検討しており、大阪だけの話では済まないと思います」
 地盤沈下する大阪経済を背負った橋下イズムの突破力が試されるところだ。

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