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1988年に開場した東京ドームに、改築や築地市場跡地への移転のウワサが出ている。今回はそのたぐいの話ではなく、それまで巨人が本拠地としていた後楽園球場の、隠れたエピソードをひとつ紹介する。
王貞治、長嶋茂雄のON砲が活躍。子供の好きなものは巨人、大鵬、卵焼きと言われた時代があった。その巨人の本拠地・後楽園球場内には常に、知る人ぞ知る、ある人物がいた。猛牛というニックネームで呼ばれた伝説の二塁手、千葉茂氏だ。
2002年12月9日に亡くなった千葉氏は、日本プロ野球における、戦前から両リーグ分立後にかけての代表的な選手。華麗で堅実な守備と流し打ちで、巨人軍の第1期、第2期黄金時代を攻守両面で支え、1947年から7年連続でベストナインを受賞している。引退後は近鉄の監督を務めたが、球団の愛称である「バファロー」(のちにバファローズ)は、千葉氏のニックネームにちなんで名付けられている。
この千葉氏は晩年、さる新聞社の野球評論家をしていたのだが、巨人の試合がある日は、朝から後楽園球場で過ごしていた。知り合いが連絡を取ろうと自宅に電話すると、決まって家族の返答は「後楽園球場にいます」というものだった。
実は球場で千葉氏は長嶋、藤田元司、王ら歴代監督を少し困らせていた。試合途中に一塁側ロッカー近くにある選手用の風呂を連日、使っていたからだ。
試合が終わり、選手が風呂に入ろうとすると、先に千葉氏がどっぷりと浴槽に浸かっている。天下のONも頭の上がらない大先輩である。選手たちの方が恐縮してしまい、ほうほうのテイで逃げ出したと伝わっている。
さらに試合で大差がついたケースや、面白くない時は早風呂もしていた。そして湯上がりには首にタオルを巻き、ランニングシャツとステテコ姿で通路を歩き回る。試合が終わり、選手を取材するために一塁ロッカー方向に向かう記者は連日、この姿に遭遇したものだ。
さすがに大敗後にこんな姿を見せつけられては、緊張感も吹っ飛んでしまう。ある日、当時の王監督は意を決して「先輩、選手より先に風呂に入るのはまずいですよ」とやんわり注意したというが、結局は続いた。
東京ドームに変わり、千葉氏の風呂上がり姿はいつしかなくなったが、惜しむ声もチラホラあったという。
(阿部勝彦)
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