スポーツ

掛布雅之 阪神・新井良太が実践する「脱力スイング」(2)

 頭では理解していても、体は簡単に言うことを聞いてくれません。ましてや、大観衆の中で打席に立てば誰もが自然と力みます。意識としては、70~80%の力で振る感覚で、実際には100%の力で振っている感じでしょう。最初から100%と思えば、自分の能力を超える120%のスイングになってしまい、バランスが崩れます。当然、ボールに当たる確率も低くなってしまいます。腹八分のスイングを心がけることが大切なのです。

 この微妙なさじ加減を覚えるには、練習で意識するしかありません。どうすればムダな力を抜いた飛ばせるスイングができるのか、いろいろと試せばいいのです。

 呼吸法も有効です。私も若手の頃に田淵さんから、打席での呼吸の大切さを教えてもらいました。鼻で吸って、口で吐く感じです。やり投げや円盤投げなどの投てき競技で、投げる瞬間に「雄叫び」を上げるシーンを見たことがあると思いますが、あれも理にかなっているのです。声を出すということはつまり、息を吐き出すことです。「雄叫び」は単に気合いの表れではなく、ムダな力みを消し、最大のパワーを引き出すことにつながっているのです。

 私が育成を手伝っている二軍でも、若手に打席での呼吸のしかたを教えています。「打つ瞬間に口を開けてみろ」とアドバイスする時もあります。実際の試合では、自然と歯をグッとかみしめてしまいます。練習では口を開けて打つことで、力の抜けたヘッドの走るスイングの感覚を覚えてほしいのです。脱力がうまくできれば、一軍昇格の道も開けてくるはずです。

 良太も昨季まではトップの時点から力が入り、スイングのバランスを崩す傾向がありました。力むことで右足体重となり右肩が下がったアッパースイングとなることが多かったのです。今季、ここまで3割以上の打率を残せているのも、脱力スイングでレベルに振れるようになったからです。

 阪神の強みは、その良太でさえ、レギュラーを保証されていないということです。今季から三塁にコンバートされた今成亮太とのキャンプ、オープン戦からの激しい定位置争いが、切磋琢磨につながっているのです。開幕から絶好調のゴメス、マートンの両外国人ですが、彼らを助けていたのが良太であり、今成です。6番打者が安パイだと、相手投手もクリーンアップには四球でOKと、ストライクゾーンで勝負しなくなってしまいます。彼らの存在感が両助っ人の成績を支えていたのです。

 これから始まる交流戦。パ・リーグには右の本格派投手が数多くそろっています。ここまでの阪神打線は変化球でかわしにかかる軟投派には強く、球威で勝負してくる右投手を苦手とする傾向がありました。勢いのあるストレートを見て打席で力んでしまっては、結果は明白です。各打者がいかに力みを消せるかが、パ投手攻略の鍵となります。

(数字は全て5月14日現在)

カテゴリー: スポーツ   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    ゲームのアイテムが現実になった!? 疲労と戦うガチなビジネスマンの救世主「バイオエリクサーV3」とは?

    Sponsored

    「働き方改革」という言葉もだいぶ浸透してきた昨今だが、人手不足は一向に解消されないのが現状だ。若手をはじめ現役世代のビジネスパーソンの疲労は溜まる一方。事実、「日本の疲労状況」に関する全国10万人規模の調査では、2017年に37.4%だった…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    藤井聡太の年間獲得賞金「1憶8000万円」は安すぎる?チェス世界チャンピオンと比べると…

    日本将棋連盟が2月5日、2023年の年間獲得賞金・対局料上位10棋士を発表。藤井聡太八冠が1億8634万円を獲得し、2年連続で1位となった。2位は渡辺明九段の4562万円、3位は永瀬拓矢九段の3509万円だった。史上最年少で前人未到の八大タ…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , |

    因縁の「王将戦」でひふみんと羽生善治の仇を取った藤井聡太の清々しい偉業

    藤井聡太八冠が東京都立川市で行われた「第73期ALSOK杯王将戦七番勝負」第4局を制し、4連勝で王将戦3連覇を果たした。これで藤井王将はプロ棋士になってから出場したタイトル戦の無敗神話を更新。大山康晴十五世名人が1963年から1966年に残…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
「メジャーでは通用しない」藤浪晋太郎に日本ハム・新庄剛志監督「獲得に虎視眈々」
2
不調の阪神タイガースにのしかかる「4人のFA選手」移籍流出問題!大山悠輔が「関西の水が合わない」
3
2軍暮らしに急展開!楽天・田中将大⇔中日・ビシエド「電撃トレード再燃」の舞台裏
4
新庄監督の「狙い」はココに!1軍昇格の日本ハム・清宮幸太郎は「巨人・オコエ瑠偉」になれるか
5
【鉄道】新型車両導入に「嫌な予感しかしない」東武野田線が冷遇される「不穏な未来」