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新日本プロレスVS全日本プロレス<仁義なき50年闘争史>「ゴールデンタイムに復帰!!全日本が再び大攻勢」

 1985年秋、苦肉の策でアンドレ・ザ・ジャイアントをジャイアント・マシンに変身させ、9月19日の東京体育館では「もう提供できるカードは、これしかない」と、アントニオ猪木VS藤波辰巳(現・辰爾)の師弟対決を組むなど、苦戦を続けていた新日本プロレス。

 それを尻目に、ジャイアント馬場率いる全日本プロレスは、10月19日から日本テレビの中継が6年半ぶりにゴールデンタイム(土曜日夜7時~7時54分)に復帰して、大攻勢に転じた。

 この好機にジャイアント馬場会長が打ち出したのは、全日本VSジャパン・プロレスの対抗戦ではなく。かつての売り物だった超大物外国人選手の対決だ。

 ゴールデンタイム復帰が決定した時期、提携するジャパン・プロレスが水面下でTBSテレビとレギュラー放映に向けて接触するなどの独立の動きをしていただけに、馬場は“ジャパンに頼らない路線”に転換を図ったのである。

 そして実現したのが10月21日、両国国技館におけるNWA世界ヘビー級王者リック・フレアーとAWA世界ヘビー級王者リック・マーテルの統一戦だ。

 当時のアメリカのメジャー組織はNWA、AWA、WWF(旧WWWF、現WWE)の3つ。

 この中で王者同士の対決は78年1月28日のフロリダ州マイアミビーチのオレンジボウル・スタジアムにおけるNWA世界王者ハーリー・レイスVSWWWF王者スーパースター・ビリー・グラハム、79年3月25日のカナダ・オンタリオ州トロントのメープルリーフ・ガーデンにおけるAWA世界王者ニック・ボックウィンクルVSWWF王者ボブ・バックランド、80年9月22日のニューヨークMSGと同年11月7日のミズーリ州セントルイスのキール・オーデトリアムで行われたNWA世界王者レイスVSWWF王者バックランド、82年7月4日のジョージア州アトランタのオムニ・センターにおけるNWA世界王者フレアーVSWWF王者バックランドの5試合のみ。

 当時のWWFはNWA傘下団体(71年8月から83年末までNWAに加盟)だったため、タイトルから「世界」の2文字を削除していたのでNWA世界王者、AWA世界王者との対戦は難しくなかった。

 しかしNWA世界王者とAWA世界王者の対決はこれが世界初。馬場はプロモーターとしての実力を内外に示したのである。

 なお、ジャパンとの関係も9月19日に修復。結果的に全日本のゴールデンタイム復帰は豪華外国人選手、全日本VSジャパン対抗戦の日本人抗争の豪華2本立てになった。

 10月19日の初回放映は後楽園ホールから生中継。興行は試合開始午後6時30分で通常なら9時前後に終了となるが、7時~7時54分に収まるように全て15分1本勝負に。テレビ的にはタイガーマスク(三沢光晴)とミル・マスカラスの激突(天龍源一郎&タイガーマスクVSマスカラス&チャボ・ゲレロ)からオンエアされ、長州力VSマーテル、ジャンボ鶴田VSフレアー、ドリー&テリーのザ・ファンクスVSアニマル&ホークのザ・ロード・ウォリアーズの4試合。メインのファンクスVSウォリアーズの試合中に放映終了となった。

 視聴率はビデオリサーチ=11.6%、ニールセン=15.5%。従来の土曜日午後5時30分~6時24分の枠では10%台という状況だったし“金曜日夜8時”という力道山時代からの文字通りのゴールデンタイムで放映される新日本の「ワールド・プロレスリング」も平均15%前後で、20%を超えられない時代に入っていたことを考えれば及第点だ。

 そして10月26日の第2回放映は、10月21日の両国国技館の録画中継。注目のフレアーとマーテルの統一戦は34分3秒に両者リングアウト。セミファイナルの鶴田&天龍の鶴龍コンビとウォリアーズのタッグ対決は鶴龍の反則勝ちに。90年代の四天王プロレスは完全決着が売り物だったが、80年代までの全日本は不透明決着が多いことが欠点だった。

 なお、長州はこの日、セミ前に谷津嘉章と組んでマスカラスとタッグで激突。マスカラスのパートナーのアート・クルーズをラリアットで仕留めると「別のカードの方がいい試合になったと思うよ」とコメント。

 11月2日の第3回放映は10月22日の京都府体育館からの録画中継でメインは鶴龍コンビVSフレアー&マーテルのNWA&AWA世界王者コンビ。天龍がマーテルにリングアウト勝ちしたが、セミの長州&谷津とウォリアーズは、ウォリアーズのマネージャーのポール・エラリングの乱入でノーコンテストに。

 翌23日のノーテレビの水戸市民体育館でも長州&谷津VSフレアー&マーテルという長州と2大世界王者が激突する好カードが組まれたが、両軍リングアウトに終わった。超大物外国人選手絡みの試合がいずれも不完全燃焼という結果に、長州は不快感を露わにしていたものだ。そして11月4日の大阪城ホールで全日本から心が離れる一戦が‥‥。

小佐野景浩(おさの・かげひろ)元「週刊ゴング編集長」として数多くの団体・選手を取材・執筆。テレビなどコメンテーターとしても活躍。著書に「プロレス秘史」(徳間書店)がある。

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