〈この度は不適切な動画の配信により、タイガースファン、ジャイアンツファン、プロ野球ファンの皆様に不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。阪神球団に対しても、球団としてお詫びいたしました。今後は球団内の情報発信体制を見直し、再発防止と適切な情報提供に努めてまいります〉
これは2020年8月6日に、読売ジャイアンツの公式SNSアカウントに投稿されたコメントだ。
コトの起こりは、前日に甲子園球場で行われた阪神・巨人戦。試合前の円陣で巨人の北村拓己が、次のように声をかけた。
「相手ピッチャー、藤浪(晋太郎)さんですけど、当てられる前にしっかりバットに当てて、初回からエンジン全開で行きましょう!」
阪神先発の藤浪晋太郎を揶揄するようなゲキを飛ばしたのである。確かに藤浪の荒れ球と制球難は死球を連発し、ノーコンと揶揄された。
だがこの年の藤浪は当日の登板も含め、21イニングで死球ゼロ。8月5日の試合でも与四球1と、安定したコントロールを見せていた。
ただ、円陣でゲキを飛ばした北村の映像は、テレビカメラが捉えていたわけではなく、普通ならばそのシーンが公に出ることはなかった。ところが球団がこのシーンを映した動画を、何を思ったか、SNSに投稿してしまったことで大騒動に。両チームのファンが入り乱れる「場外乱闘」が勃発したのである。
巨人は即刻、問題の動画を削除。不手際を認めて冒頭の謝罪コメントを発表したのだが、阪神ファンの怒りは収まらない。
〈このドアホが!苦しんどる人間ディスって何が面白いんや〉
〈メチャ腹立つ!ネットにアップする広報の神経疑う〉
プロ3年目の北村はこの年の1月に、元アイドルと結婚。前日の試合では、プロ本塁打を放ち、第1子誕生の「祝砲」となった。
ただ、北村の発言は試合内容そのものではなく、さらには、まさかこの発言を球団がダイレクトにSNSにアップするとは思いもよらなかったことで、浴びせられるブーイングに対し、同情の声が出たのは事実だ。
この日の試合は巨人が4-1で勝利。しかし両軍とも死球はゼロで、藤浪は味方の拙守絡みで4失点ながらも、8回を被安打4、7奪三振、与四球1で、自責点1という好投を見せた。SNSへの動画配信が騒動を大きくしてしまった「大問題発言」だったのである。
(山川敦司)