師走も半ば、中央競馬界は12月22日の「有馬記念」に向けてラストスパートだが、その1週前には「中荒れ馬券の宝庫」と、穴党が手ぐすねを引く名物レースがある。それが12月14日に中山競馬場で行われる牝馬限定のハンデ戦GⅢ「ターコイズS」(芝1600メートル)だ。
2017年からGⅢの格付けとなったレースで、重賞としての歴史は浅いが、グレード格付け以降の7年間で3連単の平均配当が15万円超と、一筋縄ではいかないレースとしての地位をしっかりと築いている。
今回もフルゲート16頭の出走が予定されているだけに、攻略は簡単ではないように映るが、馬券師ライターのT氏は、レースを待ちきれない様子だ。
「人気馬が総崩れするわけではないですが、ここ数年を見てわかる通り、必ず1頭は『買えなかった』とあとで嘆く穴馬が突っ込んで、高配当を演出しています。この人気の盲点に気づけば、馬券戦略は簡単です」
2020年3着フェアリーポルカ(9番人気)、2021年3着ギルデッドミラー(13番人気)、2022年3着フィアスプライド(12番人気)、2023年2着フィールシンパシー(8番人気)あたりのことをT氏は指しているわけだが、人気薄が1頭突っ込むだけで、なぜ3連単の配当が他レースに比べて高くなっているのか。T氏が言う。
「数少ない年末の牝馬限定重賞で、意外とメンバーが揃う。格上のレースを走ってきた馬が多いことで、人気が割れるわけです。2017年以降、1番人気のオッズが4倍を切ったのは2回だけ。あとは4倍台が1番人気です。上位人気を手広く押さえても、そこそこの配当が返ってくるのはそういったカラクリがあるからですね」
だからこそ、目玉となる穴馬さえ見つければ「あとは簡単」ということか。
「幸運なことに、穴をあけたのは、なぜこんなに人気がなかったのかと驚く馬ばかり。つまりメンバーが揃うことでそこまで手が回らなかった、というのが『買えなかった』後悔を生んでいる。昨年、一昨年と穴をあけた2頭は、重賞実績のない準オープン上がり。今回もそれを中心に添えるだけで、一気に馬券戦略が見えますよ」(T氏)
このアドバイスに従うなら、今回3勝クラスからの臨戦はビヨンドザヴァレーとワイドラトゥールの2頭のみ。このどちらかが本命となる。T氏の決断はこうだ。
「桜花賞6着の実績があるワイドラトゥールの方が人気のようですが、このレースで過去に馬券になった馬の多くがそうだったように、他の距離より1600メートルが得意な馬を買ってください。ワイドラトゥールの得意距離は1400メートル。この時点で消しです。ビヨンドザヴァレーは全4勝が1600メートル。マイル戦の連対率は77%です。予想オッズでは8番人気前後ですね。多少の穴人気はしていますが、馬券の軸はこれでいい」
あるいは2020年のフェアリーポルカなど、前走で距離の合わない1800メートルで凡走した「マイル戦の成績がいい馬」が毎年馬券になっていることから、T氏は「イフェイオン、フィールシンパシー、ペイシャフラワー」を挙げていた。
ちなみにペイシャフラワーの予想オッズは13番人気。この馬が激走したら、3連単配当は一気に上がる。
ともかく人気薄を1頭軸にして、ある程度は手広く買って「大きく勝てる」のが、ターコイズSの特徴であり、馬券戦略といえる。次週のグランプリ資金を蓄えるためにも、負けられない「サタデー3連単」をブチ込もうではないか。
(宮村仁)