社会

「旗本退屈男」のモデルになった近藤貞用は半グレ抗争を制した2億3550万円の高給取り

 ある程度の年齢の人ならば、早乙女主水之介という名前に聞き覚えがあるはずだ。佐々木味津三の小説「旗本退屈男」の主人公で、映画やテレビでは市川右太衛門や北大路欣也らが演じている。

 1200石の大身旗本だが、使用人は用人・笹尾喜内ら、わずか8人程度。額にある三日月型の「天下御免の向こう傷」をトレードマークに、「諸羽流正眼崩し」という無敵の剣術を駆使し、悪人をバッタバッタとなぎ倒す。その痛快な働きぶりと、江戸庶民と親しく交わる性格で、江戸っ子たちから「退屈の御殿様」と呼ばれ、親しまれているヒーローだ。

 身分制度が確立している江戸時代ではありえないような人物だが、実はモデルになったとされる武士がいる。それが近藤貞用だ。実際の貞用は、書院番や百人組頭などを歴任している。

 大阪冬の陣(1614年)に参加し、その後は徳川頼宣に従って、紀州(和歌山県)に赴いた。だが翌年、祖父の季用に召還され、3140石を受け、大身旗本になっている。

 1石を7万5000円として換算すると、収入はざっと見積もって2億3550万円の高給取り。しかも文武両道に優れ、水野成之ら旗本奴と幡随院長兵衛らの町方奴、今でいう半グレ集団の抗争を制したことで有名になり、歌舞伎の「幡随院長兵衛」には近藤登之助として登場している。この貞用こそが、旗本退屈男のモデルといわれているのだ。

 旗本退屈男・早乙女主水之介の口癖は「退屈じゃ。退屈で仕方がない」だが、実際の貞

用は、退屈とはほど遠い人物だった。延宝5年(1675年)井伊谷と花平の山境、また金

指と井伊谷の境界をめぐる争議の際には自ら出向いて調査の上、裁定を下している。新田開発も積極的に行い、青砥村などを立村した。

 明暦3年(1657年)、江戸城や多数の大名屋敷や市街地の大半が消失し、死者10万人ともいわれる「明暦の大火」では奔走し、幕府よりお褒めの言葉を受け取っている。貞用は長命で、91歳まで退屈ではない人生を送っている。

(道嶋慶)

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