かつて競馬界ではクラシック戦線こそが、3歳馬が歩むべき王道路線とされてきた。
牡馬でいえば皐月賞(中山・芝2000メートル)から日本ダービー(東京・芝2400メートル)、菊花賞(京都・芝3000メートル)へと続く三冠ロード。牝馬ならば桜花賞(阪神・芝1600メートル)からオークス(東京・芝2400メートル)、秋華賞(京都・芝2000メートル)へと続く三冠ロードである。
ところが近年、万能な距離適性が求められる三冠ロードを捨て、適距離の重賞に目標を定める陣営が増えている。中でも5月11日に行われるGⅠ・NHKマイルカップ(東京・芝1600メートル)は、非王道路線をあえて選択した陣営がターゲットとする代表格だ。
言うまでもなく、陣営が虎視眈々と狙っているのは「3歳マイル王」の座。となれば、白羽の矢を立てるべきは、デビューから一貫してマイル戦線を歩み、満を持してこの一戦に照準を定めてきた激アツ馬ということになる。
今年のNHKマイルCに駒を進めてきた18頭のうち、この激アツ条件にピタリと該当する馬は、わずか4頭。内訳は「牡馬2頭」と「牝馬2頭」である。
1頭目は前哨戦にあたるGⅡ・NZT(中山・芝1600メートル)を勝った、イミグラントソング(牡3)だ。この時の上がりタイムはメンバー最速の33秒1。今回、鞍上に名手ルメールを配してきたことも、大きな強調材料である。
2頭目は同じくNZTでクビ差の2着に好走したアドマイヤズーム(牡3)。同馬はGⅠ・朝日杯FS(京都・芝1600メートル)の優勝馬であり、「前哨戦を叩いて本番へ」というローテを考えると、勝負度合いが最も高い馬と言える。
3頭目は牡馬相手にNZTで3着と健闘したコートアリシアン(牝3)だ。1着馬との着差はわずか0秒2。同馬はNHKマイルCと同距離、同コースの新馬戦を勝っており、牡馬との斤量差を生かしての逆転があっても驚けない。
4頭目は前走のGⅠ・桜花賞(阪神・芝1600メートル)で最後方から鋭く4着に追い上げたマピュース(牝3)。美浦のWコースで行われた最終追い切りは一段と迫力を増しており、叩き3走目にあたる今回は「ピークの仕上げ」で臨む一戦となる。
いずれにせよ、今年は以上の4頭の中から優勝馬が出ると、筆者はみている。
ちなみに東京競馬場は金曜夜から土曜昼にかけて大雨となるが、その後、天候は一気に回復に向かうものと予想されている。東京の芝コースは水はけが抜群によく、レース当日は良馬場となる可能性がある。
(日高次郎/競馬アナリスト)