テリー またちょっと話は変わるんですけど、今年巨人に甲斐(拓也)が入りましたよね。僕はちょっと心配してるんですけど、どう見てますか?
江本 だって甲斐がいなかったら、他にいいキャッチャーいます?
テリー いや。でも去年は甲斐がいなくても巨人は優勝してますよね。で、甲斐って気合いが入ってるじゃないですか。それが若手のピッチャー相手ならいいけど、ある程度上の選手になると、「俺は大城(卓三)のほうがいい」とかね。
江本 それは難しいところでね。僕が南海の時、ノムさん(野村克也)が4番でキャッチャーだったでしょう。たまにノムさんが、「今日はちょっと休むわ」って言って、2番手、3番手のキャッチャーが来るんですよ。やっぱり新鮮で、けっこういい球が放れましたからね。
テリー そういうのもあるからね。
江本 まあ、だからノムさんとやる時は、首は絶対振らなかったです。
テリー 甲斐もプレッシャーだと思うんですよね。背番号10番もらっちゃって。
江本 そうですね。ただ、リード面だとかバッティングだとかは、まあどのキャッチャーでも似たり寄ったりなんですよ。僕が一番心配してるのはね、ピンチの場面で抑えますよね。で、ヘルメット脱いでベンチに帰ってくる時に、髪をちょっと振り乱した感じで、「俺はこの苦しい場面をやっと抜けたぞ」みたいな、苦しい表情をするんですよ。あれがダメなんですね。
テリー なるほどね。
江本 実はこの前、西武でキャッチャーやってた伊東勤に聞いたんですよ。そしたら、やっぱり「『このピッチャーの球なら俺が受ければ軽く抑えられるよ』っていう表情で帰らないとダメだ」って言ってましたよ。
テリー 飄々とね。
江本 うん。甲斐の場合は、一生懸命やってる姿が、むしろ苦しく見える時があるんですよ、だから、そこがちょっとね。
テリー 何かね、肩に力入った感じですよね。
江本 そうそう。やっぱりキャッチャーはピンチを迎えても平然としてないとね。本人はそのつもりじゃないかもしれないけどね。
テリー 江本さんもニッポン放送の解説とかでグラウンドに行くでしょう。その時、本人にそういうことって言えないの?
江本 コロナ以降ね、解説者がグラウンドに入らなくなっちゃったんですよ。だから選手と接する機会もなくなった。
テリー あ、今そうなってるんだ。
江本 解説者だけは一応行けるんですけど、今、ほとんど誰も行かないですよ。だから、放送席にすぐ入っちゃって見てる。これも問題でね。昔、試合前って、割と解説者とか重鎮がいて、「おい、どうや。昨日のバッティング」とかね。監督に「あそこのバントはないやろう」とか言えたんだけど、今はそれがないんですよ。そういう接点がなくなったのも、ひとつよくない点ですよね。
テリー なるほど。じゃあ、そういう江本さんの今のプロ野球に対する問題意識が詰まった本ですので、ぜひ「昭和な野球がオモロい!」読んでほしいですね。
江本 まあ僕が現役だった時代から40年も50年も経ってますからね。その時と比べて今がどうなっているかっていう、その違いを楽しんでもらえればいいし。私、8年前に胃ガンで死にかけたので、それも含めて「最近の年寄りも元気でやってるよ」ということがわかってもらえればいいですかね。
テリー もう江本さんなんて怖いものないもんね。
江本 全然ないです。あとは食って死にゃあいいだけのことですよ(笑)。
テリーからひと言
やっぱり江本さんとの野球の話は楽しいね。ただ、本編には入らなかったけど、江本さんは阪神の優勝を予想。そこは全然違うかな。今年も巨人が優勝ですよ!
ゲスト:江本孟紀(えもと・たけのり)1947年、高知県生まれ。高知商業高校、法政大学、熊谷組を経て、1971年、「東映フライヤーズ」(現・日本ハム)入団。同年、南海ホークス(現・ソフトバンク)移籍。1976年、「阪神タイガース」に移籍し、1981年、現役引退。1992年、スポーツ平和党より比例代表で出馬し、参議院議員初当選。2期12年を務めた。現在はサンケイスポーツ、フジテレビ、ニッポン放送を中心にプロ野球解説者として活動。YouTubeチャンネル「エモやんの、人生ふらーりツマミグイ」配信中。主な著書に「プロ野球を10倍楽しく見る方法」(ベストセラーズ)、「おれ、紆球曲球」(日之出出版)、「監督原辰徳研究」(徳間書店)など。最新刊「昭和な野球がオモロい! 」(マガジンハウス/日之出出版)発売中。