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独占直撃!史上最弱104連敗力士「服部桜」は今…

 番付社会の最底辺でもがき続けた男─。かつて、大相撲の序ノ口として104連敗の不名誉記録を残した最弱力士がいた。現役時代の四股名「服部桜」と聞けば、おぼろげながらご存じの方も少なくあるまい。引退4年目の今、“大転身”を機にインタビューに応じてくれた。誰も知ろうとしなかった生き様を語る。

「体重は20キロ減、生まれつき太りにくい体質で‥‥」

 遠慮がちに話すのは、21年九月場所まで大相撲力士だった服部祥多氏(26)だ。179センチで65キロは一般男性としても標準体重以下。白シャツ&黒ズボンの衣替え後の学生のような風体で現れた青年に、力士の面影はどこにもない。

「この5月から“夢と魔法の国”のフードコートでキッチンスタッフとして働き始めたんです。子供の頃からの憧れの場所だったのと、全国的な知名度がある企業に勤めることで、周りから『すごいじゃん!』と言われたかったのも偽らざる気持ちです(笑)。引退後は面接を何度も受けたけど全然ダメで、6度目の正直でした。それまでは、回転寿司やファミレスチェーンを転々としながらチャンスを狙っていました」

 引退後も不屈さは健在だ。これは中学卒業後の角界入りにルーツがあった。

「勉強も運動もダメダメで、中学2年生頃には授業についていけなくなりました。陸上部で中距離をやっていたのですが、1500メートルのベストタイムは7分40秒台と散々。進学も頭になかったので、高校受験ではわざと解答を間違える“敗退行為”で不合格。高校には行かず1年半ほどニートでしたけど、陸上競技のためにトレーニングは継続していました。その一環でやっていた四股やすり足で、足腰の筋肉が増えたことに自分なりの手ごたえを感じて、これをさらに突き詰めたいと思って相撲部屋の入門を決めました。父親や同居していた祖母からの『高校に行けるようにもっと勉強しなさい』という小言から逃げたかったというのもありました。今思えば、無謀な挑戦でしたね(笑)」

 そして服部少年は、無鉄砲な行動に出る。

「14年の九州場所後に、茨城県龍ヶ崎市にある『式秀部屋』にアポなしで入門を直訴しました。師匠の式秀親方(53)=元前頭北桜=のファンだったのがここを選んだ一番の理由です。ただ、当時16歳で家族にも相談していなかったので、丁重に追い返されました」

 地元の神奈川県茅ヶ崎市にとんぼ返りとなるも複数回の家族会議を経て、翌年8月に入門が認められた。

 初土俵は15年九月場所。もちろん、運動が苦手な素人が勝てるはずはない。

「前相撲の初戦は武蔵川部屋の姫勝山(17年引退)で、突き押し一発で土俵外に吹っ飛ばされました。負けて当たり前ですが、あまりにも一瞬すぎて‥‥さすがに絶望しました」

 それでいて、得意な取り口は「右四つ」。意外にもがっぷりと組み合うパワー勝負を好んだ。この矛盾が興味深い。

「一丁前に相手のまわしを取る癖があったので、師匠から『右四つでいけ』と。それを機に、腕立て伏せ1日100回をノルマにされました。最初はヒザをついた状態で10回10セットがやっとでした。毎日のちゃんこもつらかった。ラーメン用のどんぶりに山盛りごはん3杯が義務付けで。ごはん茶碗1杯で腹いっぱいの小食だったので、お茶で必死に流し込んでいました」

 努力は運を味方につける。前相撲から通算26戦目となる16年五月場所に初白星が転がり込んできたのだ。

「伊勢ヶ濱部屋の澤ノ富士(22年引退)に『寄り切り』で勝ったんです。相手は未経験で土俵デビューしたばかり。でも途中までは圧倒されていて、それが土俵際でうまく体を入れ替えることに成功して、そのまま土俵の外に出せた。まさにミラクルです!」

 ただ次までが遠かった。18年七月場所に二子山部屋の颯雅(現・三段目七十三枚目)に勝つまでに89連敗し、当時の記録を塗りかえた。

「この時の決まり手は『腰砕け』。相手が足を滑らせて自滅した“非技”での勝利です。2勝目までには九重部屋の錦城(現・三段目五枚目、千代大豪)との取組で見せた私の“敗退行為”も話題になりました。彼は総合格闘技出身。激しい張り手で圧倒する取組を前相撲から見せられたこともあって、ケガが怖くて敵前逃亡したんです。師匠や審判部長からは『もう絶対にやるなよ!』とこっぴどく叱られました」

 19年一月場所には峰崎部屋の峰雲(20年引退)に寄り倒しで勝利。なぜかパワフルな圧勝劇だった。

「私が『電車道』で勝利した唯一の一番でした。世の中の人の記憶にはないでしょう(笑)。同じぐらいの体格だったので力勝負で戦えました」

 だが、これが現役最後の白星。引退まで連敗街道まっしぐらで、記録を104まで伸ばした。

「『次勝つまでは負け犬だからな』という師匠の言葉に、ナニクソ精神で稽古をしていました。しかし、20年途中からコロナ禍の影響で稽古に制限がかかり、自分のモチベーションを保つのが難しくなりました」

 当時の式秀部屋はぶつかり稽古禁止など、コロナ対策を徹底していた。

「高血圧で師匠が倒れたことも拍車をかけました。師匠は自宅療養に専念、稽古を見てもらえなくなって、女将さんが部屋を仕切ることになりました。健康維持を理由にちゃんこの量も減らされて、それまで米を4升炊いていたのを3升に、鍋に肉3キロ入れていたのも2キロに減らす感じで‥‥。力士は太るのが仕事なのに考えられません。式秀部屋ではその後、弟子たちの脱走事件がニュースになりましたが、これは女将さんの管理が稽古だけでなく私生活にも及んだのが原因でした。私も誘われましたが、関与はしていません。満足に稽古できないままで自分の力がどんどん落ちていくのに耐えられず、21年8月に引退を決意したんです」

 とはいえ、現在は公私ともに充実期を迎えている。

「希望の仕事に就けたんですからね。力士時代に培つちかった粘り強さで早く一人前になるのが目標です。あと余談ですが、AKB48の追っかけもしてまして、基本的に“箱推し(グループ全体を応援)”ですけど、先日の握手会では24年3月までグループの総監督だった向井地美音(27)のレーンに並びました!(笑)」

 若者の前途は明るい!

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