春季キャンプでのブルペン投球を取材した野球解説者の上原浩治氏は、
「前田健太投手のボールは、まさに別格だった」
と絶賛していた。しかしそれが結果につながることなく、前田はデトロイト・タイガースから戦力外通告を受けた。
その後、前田の去就については古巣・広島カープやドジャースへの復帰など、様々な憶測が飛び交った。とりわけ広島ファンの間では、守護神・栗林良吏やハーンの調子が安定しないこともあって、「マエケンをセットアッパーに!」という声まで上がるほど、期待が膨らんでいた。
ところが5月15日に、状況は一転。前田がシカゴ・カブスとマイナー契約を結んだと報じられた。傘下のマイナーリーグで調整を重ね、準備が整い次第メジャー昇格する計画だという。
カブスでは今永昇太が左太腿裏の故障で15日間のIL(負傷者リスト)入りしており、復帰は早くても6月。その穴を埋める形で、先発起用のチャンスは十分にありそうだ。
カブスが37歳の右腕を獲得した背景には、上原氏がキャンプで指摘した「球の切れ味と制球力が今なお健在」という評価が大きく影響しているのだろう。年齢的に若くはないが、豊富な経験と自らを律する姿勢は、マイナーから這い上がる上で大きな武器となるはずだ。
上原氏はこうも語っていた。
「30代中盤から後半は勤続疲労でパフォーマンスが落ちやすいが、ここを乗り越えれば40代まで現役を続ける可能性が広がる」
まさにシーズン序盤のつまずきを、キャリアのターニングポイントに変えられるかどうか、だ。
マイナー契約で再スタートを切る前田の挑戦は、上原氏のコメントが決して大げさではなかったことを証明すると同時に、新たな舞台で輝きを取り戻す好機となろう。春季キャンプで見せた「桁違いの球」を再び見せつけてメジャー復帰する日を、野球ファンは心待ちにしている。
(ケン高田)