国民の怒りを煽るかのように、公式ブログ(2010年10月付)に支援者からもらった60キロのコメがうまいと綴り、
「私はコメを買ったことはない。支援者の方がたくさんくださるので、まさに売るほどある」
と令和のマリー・アントワネット発言で更迭された江藤拓前農水相。後任大臣が小泉進次郎氏に決まったが、その「知識不足」がさらなる混乱を招くおそれがある。
コメ価格の推移を見ていこう。国産米が5キロ5000円を突破した3月以降、筆者は国産米に見切りをつけて、5キロ1980円のタイ産米に切り替えた。日本国内で食べられているジャポニカ米と違って、東南アジアで作られているインディカ米は、普段は国産米の半値以下、米とぎ不要、吸水時間不要、蒸し時間不要、カレーライスやチャーハンがより美味しくなる…などの特徴を持つ。圧力鍋を使えば8分で炊き立てを食べられ、多忙な消費者、食べ盛りの子供がいる家庭にとっては救世主だった。
ところがタイ産米までが、5月の連休明けに5キロ3980円、国産米は6000円超えと、信じがたい水準まで高騰。その間、日本円は暴落もしてないし、備蓄してあるタイ米が完売したとは考えにくい。つまりタイ米の価格推移からも、異常なコメ高騰は卸業者、小売業者の「便乗値上げ」によることは確実なのだ。
こんなおかしな「中抜きビジネス」と「コメ農家崩壊」の元凶は進次郎氏の父・小泉純一郎元総理の「聖域なき構造改革」にある。
構造改革のシナリオを書いた竹中平蔵氏は過去に、農業政策について「日本に農業はいらない、農協救済はナンセンス」と言及。さらに構造改革では、非効率的な減反政策はそのままに、コメ生産者に一方的な効率化を求めたほか、「バイオマスの活用」という意味不明のカタカナを連発していた。
当時の資料を見返すと、バイオマスの活用とは「地域に存在するバイオマスを原料に、農産物の収集、運搬、製造、利用までの一貫システムを構築して、地域に産業創出する」とある。
つまり、コメ生産者⇒農業団体⇒消費者という流通経路に「中抜き業者」という産業を作り出し、コメの流通経路を複雑化したのは純一郎氏その人なのだ。
5キロ3000円以下という価格では、天候に左右されるコメ生産者は報われない。コメ価格が4000円でお釣りがもらえる程度まで値上がりしても、それがコメ農家の手元に渡るならば、誰も文句は言わない。
進次郎大臣は5月23日、民放各局のワイドショー番組をハシゴして、米価の引き下げに言及。石破茂総理も「新しい農林水産大臣のもとで、必ず米を下げることをやっていく。(5キロあたり)3000円台でなければならない」と、自民党を支持する低所得世帯に迎合し始めた。
小泉構造内閣でイナゴのように湧いた「中抜き業者」を排除せず、コメ生産者イジメを続けるなら、今度こそ日本のコメ農家はぶっ壊される。
(那須優子)