東京都交通局が「東京さくらトラム」の愛称で親しまれている都電荒川線の車両を、特別なデザインにリニューアルするプロジェクトをスタートさせた。
都電荒川線は荒川区の三ノ輪橋停留所と、新宿区の早稲田停留場を結ぶ路線電車。かつては多くの路線があった都電だが、唯一残ったのがこの荒川線だった。王子駅前と飛鳥山の間は自動車と同じ道路を走る区間があり、名所となっている。
リニューアルするのは、1900年に登場した「東京都交通局8500形電車」(写真)のうちの1両。「楽しい都電」をコンセプトに、昔の都電を思わせる山吹色のカラーを採用する。デザインは、JR九州の「800系新幹線」や「ななつ星in九州」を手掛けた水戸岡鋭治氏が担当。内装も特別なデザインに変わる。改装するのに必要な費用はクラウドファンディングで募集し、2026年春に運行を開始する予定だ。
都電荒川線は東京市電をイメージしたレトロ車両の「9000形」2両を2007年から運用しているが、それよりも特別感のある車両になるようだ。なんとも楽しみなプロジェクトだが、鉄道ファンの反応はなぜか、いまひとつ。鉄道ライターが解説する。
「JR九州のほとんどの観光列車に加え、富士急の『富士山ビュー特急』やしなの鉄道の『ろくもん』など、多くの観光列車を手掛けている水戸岡さんですが、外装はそれぞれ特徴的でかっこいいものの、内装は木材を多用した、ぬくもりが感じられるデザインばかりなんです。以前は鉄道の内装に燃えやすい木材を使うのは難しかったのですが、水戸岡さんが使い始めて話題になったので、今では彼の専売特許になっています。鉄道ファンとしては『またか』という気分になるんですよ。もっと新しいデザインを見せてほしい、という期待が込められています」
新たに手掛ける列車には、新たな水戸岡デザインを採用してくれないものか。
(海野久泰)