6月3日に89歳の生涯を終えた「ミスタープロ野球」巨人の長嶋茂雄終身名誉監督の言動は、常人には想像もつかない「斜め上」をいっていた。
それは今から30年以上前のこと。とある立教大学OBの祝賀パーティーが、都内ホテルで催された。野球で名を遂げた人物というわけではないが、ミスターの先輩にあたるということで、立教大学OBとして、ミスターが呼ばれることになった。ミスターを知るマスコミ関係者が振り返る。
「確か2回目の巨人監督に就任する直前の時期だったと思います。ミスターは壇上で『おめでとうございます』と挨拶すると『こういう人です』と、その先輩の人柄などのエピソードをひとしきり披露していました」
そして帰り際、「衝撃事件」は起きた。受付にいた当時の野球部マネージャーの女性にミスターは声をかけた。
「あ、君たち、ご苦労さんね」
優しいねぎらいの言葉だった。ところがこの次に発したセリフに、マネージャーは絶句する。
「ところで今日は何の会だったの?」
あまりの質問に、マネージャーたちはしばらく固まったままだったという。
「そばで聞いていた報道陣は、さすがミスターだと仰天するしかなかったですね(笑)」(前出・マスコミ関係者)
立派に役割を果たしたミスターであった。
(大田了)