ミスタープロ野球が亡くなったその日、野球解説者の大久保博元氏が、かつての指揮官との秘話を明かした。
1984年ドラフト1位で西武に入団した大久保氏だが、当時の監督は巨人V9戦士のひとりであり、管理野球で有名な広岡達朗氏だった。
YouTubeチャンネル「デーブ大久保チャンネル」で、大久保氏は次のように回想している。
「あの頃、太ってる選手っていうのは重罪人みたいな、管理ができてないっていう…。特にライオンズは広岡監督の管理野球で、玄米を食べる。じゃあ、なんでオレ獲ったんだろうみたいな、痩せろって言われて。いや、太っててホームラン打ってきたのに、痩せちゃってどうなっちゃうのかなって思って」
捕手から三塁手にコンバート。不慣れなポジションでミスすれば怒られ、だったらなぜドラフト会議で自分を指名したのかと、不信感が募った。
そして1992年5月、大久保氏は巨人に移籍。1993年から監督を務めたミスターからは、こんな声をかけられた。
「大久保君か、キミは太ってていいんだぞ。それが特徴だから。思い切ってホームランを狙いなさい」
大久保氏は言う。
「いいスイングしてるね~、って言ってもらって。あの時代に、太ってていいんだって言ってくれた方がいなかったんで…」
ミスターがスローガンに掲げた「スピード&チャージ」には「チャージができないし、スピードもないんだから」と不安を覚えたが、ミスターは大久保氏を愛称の「ブーちゃん」と呼び、
「キミの中のスピード&チャージ、ベストを尽くせばいいんだぞ。100メートルを10秒台、11秒台で走れってことじゃないんだ…みたいなことを言っていただいて。あの天下の長嶋監督がそんなことを言ってくれてんだって、練習に熱を込めてやりました」
1994年、長嶋巨人は西武を相手に4勝2敗で日本シリーズを制覇。第3戦で先発マスクをかぶり、延長10回の末に2-1で古巣に勝利した大久保氏が、感極まる瞬間であった。
(所ひで/ユーチューブライター)