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「未完の中国文化大革命 毛沢東と日本の連動」
楊海英・著
PHP新書/1375円
本書は2010年に「司馬遼太郎賞」を受賞した、「墓標なき草原」(岩波書店)の続編というべき内容である。
中国共産党は77年に終結宣言がなされた「文化大革命」を歴史から抹消しようとしている。それは中国共産党にとって不都合な歴史だからだ、と著者は言う。本書は「文化大革命」の資料を地道に収集し、革命開始から日本や国際社会への影響を考察する。
本書の特色は、破棄されたはずのゴミ資料と呼ばれている「紅衛兵(毛沢東によって動員された革命運動体)たち」のビラなどから、歴史に埋もれた人々を具体的に鮮やかに浮かび上がらせていることだ。中国共産党に忠実であったのに突如、反革命分子の汚名を着せられ、処刑される実態が数多く描かれており、そのあまりの理不尽さに怖気づいてしまう。粛清とは「死」なのである。
文革の主要登場人物と言えば毛沢東の妻、江青である。国家主席への返り咲きを狙う毛沢東は、江青に「文化活動における階級闘争を徹底しろ」と指示する。「文化大革命」の始まりである。江青は「毛主席の犬」を自称し、「文化大革命」の旗手となる。「文革」は激化し、「漢族が漢族を殺戮する」「国家政策によるジェノサイド」へと変貌していく。
「文革」が終わりを告げると、邪魔になった「紅衛兵たち」は農山村に追いやられてしまう。習近平もその一人だ。彼は、父が文革の犠牲者であるにもかかわらず国内の諸民族を弾圧し、周辺地域に漢族を送り込んで民族浄化を図っている。
習近平は「毛沢東が夢見て未完に終わった文化大革命を『継続』」しているのだ。著者は「習近平の『中国の夢』とは、すなわち『文化大革命の完成』であり、現在の中国もまた文化大革命の最中にあるといえるのだ」と結論づける。
「文革」は日本にも大きな影響を与え、学生運動へとつながった。毛沢東の権力奪取に向けた私闘であることなどつゆとも知らず、田舎の高校生の私は毛沢東語録を読み「造反有理」を叫んでいた。
66年、中共の対外活動責任者の廖承志は、北京大学で「我々は日本工作をしっかりやろう。日本工作はすなわち戦争の用意だ」と演説した。著者は、日本への干渉の重要性は、今も変わらないと指摘する。私たちは、中国共産党の実態を知る十分な情報がない。そのため、中共のプロパガンダに乗せられる可能性が高い。この点は警戒しなければならない。
著者が中国共産党にジェノサイドされた内モンゴルから日本に帰化した人物であることを考慮すると、本書で私たち日本人に「油断すると、中共にジェノサイドされるぞ」と警告を発しているのかもしれない。
江上剛(えがみ・ごう)1954年、兵庫県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。77年、旧第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入行し、人事部や広報部を経て、支店長などを歴任。02年に「非情銀行」で作家デビュー。10年、日本振興銀行の経営破綻に際して代表執行役社長として混乱の収拾にあたる。「翼、ふたたび」など著書多数。
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