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記事全文を読む→佐藤誠「取調室の裏側」〈踊る「青島」は捜査一課に不向き。花形部署で求められる人材とは〉
脱サラして湾岸署刑事課に配属された青島俊作(織田裕二)の活躍を描いた「踊る大捜査線」。9月18日公開のシリーズ最新作では、青島がついに「捜査一課」に着任した。
そこで今回は、警視庁に所属する約4万3600人の警察官のうち、わずか1%未満の精鋭で構成される「花形」部署の知られざる舞台裏を明かそう。
実のところ、この狭き門をくぐるための特別な試験は存在しない。殺人などの凶悪事件が発生した際、一課の刑事は所轄の捜査員とコンビを組んで捜査にあたる。そこで手腕を発揮できれば、一課の「相棒」や上司に推薦してもらい、本庁に引き上げられる仕組みだ。
配属されるのは早くても30代前半、中心となるのは脂の乗った40代だ。一課は「階級を上げる通過点」とも位置づけられ、在籍期間はおよそ2年サイクル。本庁に呼ばれれば、昇任が半ば約束されたも同然で、そこから試験を経て階級を上げ、一度所轄へ戻った後に再び一課に返り咲く――これが出世の王道ルートだ。
俺のように18年間も籍を置き続けたケースは異例で、二度と現れないだろう。
だが出世コースに乗ったからといって、誰もが現場で通用するわけではない。所轄以上に組織の「駒」としての従順さと、個人として研ぎ澄まされた「頭脳」が求められる。捜査では一課長の指示を待つのではなく、最前線に立つ刑事がそれぞれ独自のスジ読みを行わなければならない。
今年3月に京都府で男子児童の安達結希さんが義父・優季に殺害された事件捜査にあたったとする。養父は男児失踪の翌日、あらかじめ用意していた捜索ポスターを配った。その「手際のよさ」の異様性に違和感を覚えることができるかどうか――このような一瞬の洞察力がなければ、一課の象徴「赤バッジ」をつける資格はない。
この厳しい現実から見れば、熱血漢でスタンドプレーに走る青島は一課の刑事には向いていない。みずからの正義に固執して突っ走れば、冷静かつ客観的な判断を見失い、冤罪のリスクがあるからだ。
心休まる暇もない一課の現場では、刑事の心身は極限まで追い詰められる。事件が発生すれば土日も関係なく解決するまで休みはない。裏を返せば事件が起きない「平穏な時間」は何もすることがなかった。
そんな時は、休日出勤の代休消化のため、パチンコや昼寝に明け暮れるプー太郎のような日々に一転する。近所の老婦人から、
「最近、いつも家にいるわねぇ」
と本気で失業を心配されたこともあった。同僚たちも家でゴロゴロしているものだから、家族に煙たがられて追い出されるのがお決まりのパターンだ。
周囲から「花形の精鋭」と羨望の眼差しを向けられても、普段の姿は案外、肩身の狭いものである。
佐藤誠(さとう・まこと)警視庁捜査一課殺人犯捜査第一係、通称「サツイチ」の元取調官。1983年、警視庁入庁。2004年に捜査一課に配属。『伝説の落とし屋』と呼ばれる。「木原事件」で木原誠二氏の妻・X子さんの取調べを担当。2022年に退官。
佐藤誠の相談室
https://satomakoto.jp/
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