政治

田中角栄 日本が酔いしれた親分力(7)新潟の選挙民を東京で歓待

20160707y1st

 田中角栄は役職、年齢を問わず、あらゆる立場の人々の心を瞬く間につかみ、己の力へと変えながら政界の頂点へと駆け上った。その躍進を支えたのは、飾らない人柄、細やかな心配り、たゆまぬ情報収集、そして大胆な決断力。時代を動かした男の魅力は、ここにある!

 1952年(昭和27年)10月1日。総選挙の運動中に、田中角栄の地元新潟の秘書である本間幸一が、目白の田中邸を訪れ、興奮した口ぶりで田中に言った。

「選挙態勢強化のために、いい案を思いつきました」

 日ごろ冷静な本間にしては珍しく、その案を得々と説明した。

「地元の選挙民を、この目白の家へ団体旅行させてはいかがでしょうか」

「うむ、それは悪くない」

「団体で寝泊まりし、同じ釜の飯を食うと、不思議と仲間意識が湧くものです。団体で東京に来て代議士に会うことを繰り返している内に、自然に後援会が固まっていくものです。春に旅行すると、さらに効果も出ます。越後の厳しく長い冬からの解放感も味わえ、暖かい東京に出かけることで、太平洋側と新潟の地域格差を肌で知ってもらうこともできます」

「おお、素晴らしい考えだ。毎年やろう。俺も時間のある限り地元民と会う」

 本間は、さっそく「目白詣で」を実行に移した。2泊3日の日程を組み、地元民を夜行列車に乗せ、新潟を出発した。当時の地元民にとって、新潟から出て東京見物できるなど、夢のような時間であった。

 東京に着いた翌朝、銀座の東京温泉でひと風呂浴びさせて、朝食をとらせると、田中の刎頸(ふんけい)の友である小佐野賢治が経営する国際興業のバスに乗せ、目白台の田中邸に向かわせる。

 田中邸では、田中自らが下駄をつっかけたざっくばらんな姿で出迎え、一人ひとり全員にお茶を出し、羊羹を配った。当時は甘いものが珍しく、みんな羊羹を紙に包んで大事に持ち帰った。

 田中は訪問客を前に、得意の浪曲「天保水滸伝」をうなった。

 ♪利根の川風袂に入れて 月に棹さす高瀬舟

 選挙民たちは、田中の浪花節に拍手をし、「おらが先生」という親しみを持った。

 その後は、国会議事堂へ。生まれて初めて踏む赤絨毯を、まるで雲の上でも歩いているような気持ちで楽しんだ。地方からの選挙民が国会の赤絨毯の上を団体で歩く光景は、この「目白詣で」から始まった。

 その後は皇居、浅草の国際劇場でレビュー鑑賞、さらに江の島、熱海、伊豆方面の観光にも行き、選挙民たちはたっぷりと旅を堪能した。

作家:大下英治

カテゴリー: 政治   タグ: , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    実力派ジョッキー戸崎圭太も登場!「KEIRIN GP2019」スペシャル企画動画『The DAN(座談)』をチェックせよ!

    Sponsored
    138500

    12月にもなると「なんだか気持ちが落ち着かない…」というギャンブル好きの読者諸兄も多いことだろう。というのも年末は、競馬の「有馬記念」、競艇の「賞金王」、オートレースの「SS王座」といったビッグレースが目白押しだからだ。競輪では、12月30…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , , , |

    センベロ、野球、鉄ちゃん、アニメ、オタク……趣味などの価値観重視で生涯のパートナーを見つけるマッチングアプリが中高年に最適なワケ

    Sponsored
    136162

    50歳で結婚歴のない「生涯未婚率」が激増している。これは2015年の国勢調査の結果によるもので、親世代となる1970年の同調査に比べると、その率なんと約14倍なんだとか。この現実をみると、「結婚できない……」ことを切実な問題として不安に思う…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

    “男の活力低下”につけこむ甘い罠…手軽に入手できる海外未承認薬の危険過ぎる実態に迫る!

    Sponsored
    133097

    40代50代の中高年男性といえば、人間関係、リストラの恐怖、のしかかる責任感など仕事上の悩みに加えて、妻や子どもとの関係、健康や老後の不安といったプライベートなことまで、さまざまな問題を抱えているもの。そしてこれらがストレスとなり、加齢によ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , , , |

注目キーワード

人気記事

1
東出昌大、「不貞を笑いに変えた袴田&原田のようにはなれない」最大理由!
2
浜崎あゆみが別人に!?「誰これ?」「怖すぎ」コメントが続々
3
やることがイケメン過ぎ! King Gnu井口理に日向坂46ファンから感謝の声殺到
4
人前で夜の営みを!?沢尻エリカ、「18歳からクスリ漬け&ハメまくり生活」の衝撃
5
「知らなくていいコト」、重岡大毅の“闇深演技”にドン引きの声も興味爆増!?