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記事全文を読む→プロ野球「師弟の絆」裏物語 最終回 新垣渚と秋山幸二の「捲土重来」(2)
「この試合は渚に預けた」
投手が再起のマウンドで生きるか、死ぬかによって、そのシーズンのチームの運命を握ることにもなる。
かつて元西武の監督だった東尾修は、「再起のマウンドはプレッシャーのかからないビジターの2戦目の先発にするのが普通」と話していた。
そこには投手の気持ちをおもんぱかる配慮があったが、野手出身の秋山はあえて、「本拠地の第3戦目」を選んでいる。
「本拠地に元気で戻ってきたことを示さなければいけないし、和田、杉内と同年齢である新垣には、自分が最年長としての自覚を持ってもらうためには、プレッシャーのいちばんかかるところで使って、結果を出してほしかった」
第3戦目での新垣の起用について秋山監督はこう語っていたが、それに応えた新垣も立派だった。一軍でのマウンドは実に3年ぶり。120球の完投で4年ぶりの勝利をあげたのであった。
投球内容も振るっていた。圧巻は2対0とリードしていた8回、新垣は無死二、三塁のピンチを迎える。一打出れば同点のピンチ。ここで秋山監督はまったく動こうとせず、マウンドに向かう高山投手コーチに「この試合は渚に預けたと言ってくれ」と、伝言を託した。新垣はのちに、「監督は肝っ玉が据わっている」と評している。
だが、打席に立った代打の北川を抜ければ同点という強烈なゴロに反応して投ゴロに。続いて赤田を三振。最後に、坂口を二塁ゴロで打ち取った瞬間、新垣は福岡ヤフードームの天井に向かって拳を突き上げたのだった。
9回に1点を失ったのはご愛嬌としても、ソフトバンクは4年ぶりに開幕3連勝。昨年日本一になりながら、43勝分の投手陣とチームリーダー・川崎を失った嫌なムードを払拭する好スタートの立て役者となったのである。
その後、新垣はローテーションを守り、6月末まで5勝をあげて、先発の一角を担っていた。
秋山は選手起用について持論がある。
「こっちがアレコレ言う必要は何もない。調子を落とした選手は二軍に行き、上がってきた選手を使えばいいだけのこと。ベテランと若手は関係ないよ。調子のいい選手を使うだけ」
確かに最初に起用する時には、いろいろ投手へ配慮こそするが、チームが動きだしたら、判断材料になるのは監督の目だけである。
秋山は、こんなことも口にしていた。
「自分が打者として見た場合、打ちにくい球を投げているかどうかが使う基準」
ある種、秋山の“非情采配”は新垣にも容赦なかった。新垣がシーズン途中、肘の張りを訴えて、負けが込み始めた時、躊躇なく二軍行きを命じた。そしてその時に伝えたのは、
「必ず役立ってほしい時が来る。自分の力で上がってきてくれ」
という言葉であった。
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