スポーツ
Posted on 2018年01月11日 05:56

玉木正之のスポーツ内憂内患「大相撲暴行で見えてきた『人情相撲』の現実」

2018年01月11日 05:56

 テレビというメディアは老若男女、あらゆる人々が見るわけだから、発言内容には自ずと規制が生じる。それは当然のことで、何でも自由に喋らせろ、などと言う気は毛頭ない。

 が、貴乃花親方と日本相撲協会幹部との対立や、横綱白鵬との軋轢‥‥という問題を語るときは、テレビの「発言規制」が邪魔になる。

 たとえばある番組で「貴乃花親方が白鵬を初めとするモンゴル人力士を嫌っているのは何故ですか?」と電話で質問されたので、私はこんなふうに答えた。

「それは貴乃花親方が現役時代からガチンコ相撲を貫き、親方になってからも拵え相撲を嫌い、弟子たちにもガチンコ相撲で指導している。だから他の部屋のモンゴル勢がやってると言われる星の貸し借りや回し合いを嫌うのでしょう。そんなときに弟子の貴ノ岩がガチンコで白鵬に勝ったわけで、それを不愉快に思ったモンゴル勢が‥‥」

 と話し出したところが、「チョットすいません」と、受話器の向こうから話を遮られた。

「今、放送用の録音を録っていますので、ガチンコとか、拵え相撲とか、星の貸し借り、回し合いという言葉を、他の言葉に変えてくださいませんか?」

 私は、苦笑いしながら少し考えたあと、

「貴乃花親方と白鵬では、相撲道というものに対する考え方が全然違うわけで‥‥」

 と、話し直した。

 テレビだけではない。

 ラジオはまだ、「モンゴル勢の力士たちは、モンゴル互助会などと呼ばれる星の貸し借りをやっているという人もいますが‥‥」と、奥歯にモノが挟まったような喋り方になるとはいえ、ある程度までは喋ることができる。が、新聞はテレビと似たり寄ったりで、コラムで「モンゴルの力士には星の貸し借りの噂も‥‥」と書いたところが、「キチンとした証拠がないものを書くのは控えてほしい」と言われ、「訂正」させられた。

 もちろんテレビの短いコメントや新聞の短いコラムのなかで、「モンゴル力士の星の貸し借り」などと言ったり書いたりすると、視聴者や読者の多くは、「えっ? モンゴル力士は八百長をやってるの?」と仰天され、相撲協会には「そんな事実はない」と抗議され、さらには「ヘイトスピーチ」との非難を浴びないとも限らない。

 さらに、それ以上に問題(と私が思う)なのは、相撲をあまり見ず、好きでもなく、よく知りもしない人(テレビのコメンテイターに結構多い)が、「拵え相撲? 星の貸し借り? 八百長じゃないか! 仲間内でそんな悪いことをしていいのか!」と、正義漢ぶって短絡的に憤ることだ。

 そんな人には、現役時代の貴乃花親方も兄の若乃花と優勝決定戦をやったときには負けましたよ‥‥などと言っても通じない。足をボロボロに痛めた貴乃花を武蔵丸は責めなかったじゃないですか‥‥と言っても、アレは八百長だったのか?‥‥と野暮な言葉を返されかねない。「人情相撲」も八百長の一種と捉えられるに違いない。

 現役時代の貴乃花は見事に素晴らしい横綱だった。そして親方となって、自分の「ガチンコ相撲道」を貫いているのも見事である。

 一方、1年6場所もあるなかで、人情相撲や星の貸し借りが生じるのも人間なら仕方ないことで、多くの力士がそんな世界で生活していることもまた事実だ。

 そんななかで起きた今回の「日馬富士vs貴ノ岩暴行事件」と「白鵬vs貴乃花親方対立事件」。もしもかつての時津風親方(横綱双葉山)だったら、「バカモン! どっちもほどほどにしろ!」と、一喝して幕引きだろう。

玉木正之

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