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記事全文を読む→「現役引退」斉藤和巳を田中将大は超えられるか?
人間とは常に「失ってから気づく」動物だ。五体満足、元気満々、精力旺盛、家計安泰、記録更新‥‥やることのほとんどがうまくいく時に、細かいほつれに気づくのはなかなか難しい。たとえ気づいても「自分は大丈夫」と高をくくるだろう。
プロ野球選手の発する言葉に感銘を受けたことはほとんどないが(その多くが言わされてる感がありありだからだが)、現役引退を表明したソフトバンクの斉藤和巳氏の「正直、ケガして良かった」にはグッとくるものがあった。
実際には、野球選手がケガをして良いことなど一つもない。とくに投手なら、スピードは落ちる、キレがなくなる、スタミナも戻らない、三重苦とも言っていい。事実、沢村賞を二度も受賞し、ピーク時の03~06年の4年間で64勝16敗、勝率8割という驚異的な数字で「負けない男」として君臨した斉藤は、ここ数年、マウンドへ戻るためにもがくだけの年が続いていた。「ケガに始まり、ケガに苦しみ、ケガに終わった」
と本人も振り返っているが、それなのに、なぜ「良かった」のか。間違いなく、グラウンドで野球をする以上のものを得たからだろう。「ケガをしたことでいろいろなことに気づかされ、いろいろなことを感じることができました」。
おそらく人生観を変える数々の出会いや出来事があったのだろう。かつては飛ぶ鳥を落とした過去を持つ選手が「ケガをして良かった」と語れるほど人間的に成長を実感しているなら、これは期待するしかない。昨今、不信感ばかりが増幅しているプロ野球界を、新たな斉藤和巳が引っ張っていってほしいものである。
さて、今年は東北楽天イーグルスの田中将大投手が、斉藤和巳の開幕15連勝を楽々と超え、さらには勝率記録(9割4分1厘)まで塗り替えようとしている。では、田中将大は本当に斉藤和巳を超えたのか? 誠に勝手ながら、マー君のあのスプリットが落ちなくなり、あの剛速球がはじき返されるようになる年になるまで、その結論は保留したい。
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